顧問先から従業員の健康に関わる相談を受けたとき、どの場面で産業医と連携すればよいのか。
この記事では、社会保険労務士(社労士)の業務と産業医の職務を条文で確認したうえで、連携が生じる5つの場面、産業医に渡す情報と返してもらう情報のチェックリスト、守秘義務・個人情報の注意、産業医がいない従業員50人未満の事業場の相談先を整理します。
顧問先の相談を受ける社労士の方にも、社労士と産業医の役割分担を知りたい人事・総務の担当者の方にも読めるよう、e-Gov法令検索の条文と厚生労働省の指針で実際に確認できた範囲だけをまとめました。
・社労士の業務範囲と産業医の職務の対比(条文で確認)
・産業医と連携するとよい5つの場面と、法令上結びつく手続き
・産業医に渡す情報・返してもらう情報のチェックリスト
・守秘義務・個人情報・本人の同意の注意点
・産業医がいない従業員50人未満の事業場の相談先
社労士と産業医は何が違う?条文で確認できる業務範囲と職務の対比
社労士と産業医は、根拠になる法律が異なります。社労士は社会保険労務士法、産業医は労働安全衛生法とその規則です。まず、それぞれが何を担うと条文に書かれているかを確認します。
社労士の業務範囲|社会保険労務士法第2条が定める3つの事務
社会保険労務士法第2条第1項は、社労士が行うことを業とする事務として、主に次の3つを定めています。
- 申請書等の作成と提出手続(第1号・第1号の2):労働・社会保険に関する法令(別表第一に掲げる法令)に基づいて、行政機関等に提出する申請書・届出書・報告書などを作成すること、その提出に関する手続を代わってすること。別表第一には、労働安全衛生法も含まれています。
- 帳簿書類の作成(第2号):労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(申請書等を除く)を作成すること。
- 相談・指導(第3号):事業における労務管理その他の労働に関する事項と、労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、相談に応じ、または指導すること。法令、労働協約、就業規則、労働契約の遵守の状況を監査することを含みます。
第1項には、このほかに事務代理(第1号の3)や紛争解決手続の代理(第1号の4から第1号の6)も定められています。また第4項は、第1項各号の事務には、その事務を行うことが他の法律において制限されている事務は含まれない、と定めています。
産業医の職務|労働安全衛生規則第14条が定める事項
労働安全衛生法第13条第1項は、事業者は政令で定める規模の事業場ごとに、医師のうちから産業医を選任し、労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない、と定めています。政令(労働安全衛生法施行令第5条)が定める規模は、常時50人以上の労働者を使用する事業場です。
労働安全衛生規則第14条第1項は、産業医が行う事項を「医学に関する専門的知識を必要とするもの」として、次のように定めています。
- 健康診断の実施と、その結果に基づく労働者の健康を保持するための措置
- 長時間労働者などへの面接指導と、その結果に基づく措置
- ストレスチェックの実施、高ストレス者への面接指導と、その結果に基づく措置
- 作業環境の維持管理
- 作業の管理
- 上記のほかの、労働者の健康管理
- 健康教育、健康相談、その他労働者の健康の保持増進を図るための措置
- 衛生教育
- 労働者の健康障害の原因の調査と、再発防止のための措置
このほか、産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対して勧告できます。事業者は、その勧告を尊重しなければなりません(労働安全衛生法第13条第5項)。勧告の詳しい扱いは、産業医の勧告の記事で解説しています。
なお、就業規則の作成、懲戒、休職制度の設計、社会保険・労働保険の手続き、労働契約の内容は、第14条第1項に列挙された事項に含まれていません。
【対比】何を誰が担うか|役割分担の早見表
ここまでの条文の内容を、表に整理します。
| 項目 | 社会保険労務士 | 産業医 |
|---|---|---|
| 根拠となる法令 | 社会保険労務士法第2条 | 労働安全衛生法第13条、労働安全衛生規則第14条 |
| 条文が定める中身 | 申請書等の作成・提出手続、帳簿書類の作成、労務管理・社会保険に関する相談・指導 | 医学に関する専門的知識を必要とする事項(健康診断後の措置、面接指導、健康相談など) |
| 労務管理・就業規則 | 労務管理その他の労働に関する事項の相談・指導(第3号)。就業規則の遵守状況の監査を含む | 第14条第1項に列挙された事項には含まれない |
| 医学的な事項 | 第2条第1項に、医学的な事項を挙げた号はない | 医学に関する専門的知識を必要とする事項を行う |
| 事業者への意見 | 相談に応じ、指導する(第3号) | 必要があると認めるときは、事業者に勧告できる(労働安全衛生法第13条第5項) |
| 選任報告など、労働基準監督署への報告 | 報告書の作成・提出手続は、第1号・第1号の2の事務に当たりうる | 選任・辞任等の報告義務を負うのは事業者(労働安全衛生規則第13条) |
表の読み方として、次の点に注意してください。
- 条文が定めているのは、業務や職務の中身です。「この場面は必ずどちらが行う」とまで定めた規定は、今回読んだ範囲では確認できませんでした。
- 社会保険労務士法第27条は、社労士または社労士法人でない者が、他人の求めに応じ報酬を得て、第2条第1項第1号から第2号までの事務を業として行うことを禁じています(他の法律に別段の定めがある場合などを除く)。第3号の相談・指導は、この条の対象に挙げられていません。
- 事業者が自社の報告書を自分で作成して提出することを禁じる条文は、今回読んだ範囲には見当たりません。
- 弁護士や医師の業務との線引きは、この記事では断定しません。
社労士が産業医と連携するとよい5つの場面|手続きと担い手の整理

社労士が顧問先の労務・健康管理の相談を受けるなかで、産業医との連携が関わる場面を5つに整理します。各場面で、法令上どの手続きがどの主体に結びつくかを確認し、手順の詳細は各記事へ案内します。
場面1:産業医の選任・変更・辞任があったとき
産業医の選任・変更・辞任には、次の手続きが結びつきます(労働安全衛生規則第13条)。
- 選任すべき事由が発生した日から14日以内に、産業医を選任する(第1項第1号)
- 産業医を選任したときは、遅滞なく、所轄の労働基準監督署長に報告する(第2項)
- 産業医が辞任したとき、または解任したときは、遅滞なく、その旨と理由を衛生委員会または安全衛生委員会に報告する(第4項)
- 産業医の辞任等があったときは、遅滞なく、所轄の労働基準監督署長に報告する。後任者の選任の報告で代えることができる(第5項)
これらの主体は事業者です。報告書は、行政機関等に提出する報告書に当たりえて、労働安全衛生法は別表第一に含まれるため、作成と提出手続は社会保険労務士法第2条第1項第1号・第1号の2の事務に当たりうる場面です。
顧問先から手続きの相談を受けたときは、様式と提出の流れを産業医選任報告書の書き方で、変更・辞任のときの流れを産業医の変更手続きで確認できます。産業医の選任義務の全体像は、産業医の選任義務の記事が扱っています。
場面2:健康診断の結果に異常の所見があったとき、ストレスチェックの結果が出たとき
健康診断とストレスチェックの後には、次の手続きが結びつきます。
- 健康診断の後:異常の所見がある労働者の健康診断の結果に基づき、事業者は、健康を保持するために必要な措置について、医師または歯科医師の意見を聴かなければならない(労働安全衛生法第66条の4)
- ストレスチェックの後:事業者は、医師、保健師などによる検査を行わなければならない。検査を行った医師等は、労働者の同意を得ないで、検査の結果を事業者に提供してはならない(同法第66条の10第1項・第2項)。なお、産業医の選任義務がない常時50人未満の事業場では、労働安全衛生法の附則により、当分の間、検査の実施は努力義務とされています(令和10年4月1日から義務化)
- 面接指導:要件に該当する労働者が面接指導を受けたい旨を申し出たときは、事業者は医師による面接指導を行わなければならない。申し出たことを理由とする不利益な取扱いは禁止されている(同条第3項)
- 面接指導の後:事業者は、医師の意見を聴き、その意見を勘案して、必要があると認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置を講じる(同条第5項・第6項)
医師の意見を聴くのも措置を講じるのも事業者です。就業上の措置を講じたあと、労働時間や配置の扱いを就業規則や労働契約と照らして整理する場面は、労務管理の相談として社労士が関わりうる場面です。
健康診断後の流れは健康診断の事後措置の記事、高ストレス者が出たときの流れは高ストレス者への対応の記事で解説しています。
場面3:長時間労働の労働者が出たとき(面接指導)
長時間労働者への面接指導には、次の内容が結びつきます。
- 対象:休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合のその超えた時間が、1か月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者(労働安全衛生規則第52条の2第1項)
- 労働時間の算定:毎月1回以上、一定の期日を定めて行う。80時間を超えた労働者には、その時間に関する情報を速やかに通知する(同条第2項・第3項)
- 産業医への情報提供:80時間を超えた労働者の氏名と、その超えた時間に関する情報を、算定を行った後、速やかに産業医へ提供する(同規則第14条の2)
- 面接指導を行う人:労働安全衛生法は「医師による面接指導」と定めていて、産業医に限られていない(同法第66条の8第1項)
労働者の申出により面接指導を行うこと、そして労働者数50人未満の小規模事業場にも面接指導が適用されることは、労働者健康安全機構のページでも案内されています。労働時間の算定と記録の仕組みは労務管理の領域で、顧問先から相談を受ける場面になりえます。
面接指導の流れは、過重労働対策の記事と産業医面談の残業時間基準の記事で解説しています。
場面4:休職・復職の判断が必要になったとき
休職や復職の判断は、医学的な意見と、就業規則の定め、本人の状況などをあわせて行う場面です。産業医などの医師の意見を聴く場面と、就業規則に沿って手続きを進める場面が重なります。個別の事案の判断は状況によって変わるため、この記事では判断の中身には踏み込まず、場面ごとの記事へ案内します。
- 復職を判定するときの確認項目と記録:復職判定の進め方
- 産業医が復職を認めない意見を出したとき:産業医が復職を認めないとき
- 休職期間の満了が近づいたとき:休職期間満了で自然退職にする前に
なお、厚生労働省の指針は、職場復帰のための面接指導の結果を、事業者があらかじめ本人の同意を得て取り扱うことが必要な心身の状態の情報の例に挙げています。この点は、後の「連携で注意すること」で説明します。
場面5:就業規則や社内規程を整備するとき
社労士が顧問先の就業規則や社内規程を整備する場面でも、産業医との連携が関わる場合があります。
- 休職・復職に関する定め:休職の期間や満了時の扱いを就業規則にどう定めるかについては、以下の記事で扱っています。
>>休職期間満了で自然退職にする前に|就業規則の定めと満了前の進め方
医学的な観点の助言が必要な部分は、産業医に確認する形が考えられます。 - 健康情報の取扱規程:厚生労働省の指針は、事業場ごとに心身の状態の情報の取扱規程を定めることを求めています。衛生委員会等を活用し、労使関与のもとで検討して定め、労働者と共有します。
連携の進め方|産業医に渡す情報と、返してもらう情報のチェックリスト
産業医への情報提供は、法令上は事業者(顧問先)が行うものとされています。社労士は、顧問先の依頼を受けて情報の整理や橋渡しに関わる立場です。顧問先の了解のもとで進めます。
顧問先から相談を受けたら、最初に整理すること
産業医に連絡する前に、次の点を確認します。
- 相談の内容は、5つの場面(選任・変更、健康診断・ストレスチェックの後、長時間労働、休職・復職、規程整備)のどれに当たるか
- 顧問先の事業場は、常時50人以上の労働者を使用しているか(産業医の選任義務の対象か)
- 顧問先に産業医がいるか。いない場合は、後述の相談先を案内できるか
- 顧問先に、健康情報の取扱規程があるか
- 相談に、本人の同意が必要な情報(後述の分類③)が含まれていないか
- 産業医との連絡窓口を、顧問先のどの担当者が担うか
産業医に渡す情報のチェックリスト
事業者が産業医に提供することが法令で定められている情報は、次のとおりです(労働安全衛生法第13条第4項、労働安全衛生規則第14条の2)。
- 健康診断や面接指導などの結果に基づいて、すでに講じた措置、または講じようとする措置の内容(措置を講じない場合は、その旨とその理由)。医師の意見を聴いた後、遅滞なく提供する
- 月80時間を超えた労働者の氏名と、その超えた時間に関する情報。算定を行った後、速やかに提供する
- 上の2つのほか、労働者の業務に関する情報で、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるもの。産業医から求められた後、速やかに提供する
相談の内容に応じて、次の情報も整理しておくと、産業医が意見を述べやすくなります。これは実務上の一般的な整理で、法令で一律に定められたものではありません。
- 相談の趣旨と、産業医に意見を求めたいこと
- 業務の内容と、勤務の状況(出退勤の記録、時間外労働の時間など)
- 適用される就業規則や休職規程の該当部分
- 本人や上司からの聞き取りのうち、事実関係をまとめたもの
- 本人の同意が必要な情報を含む場合は、同意を得た範囲
産業医から返してもらう情報のチェックリスト
健康診断、長時間労働者の面接指導、高ストレス者の面接指導の後には、事業者が医師の意見を聴くことが定められています(労働安全衛生法第66条の4、第66条の8第4項、第66条の10第5項)。意見を受け取るときは、次の点を確認します。意見書の意味と効力は産業医の意見書の記事、書式は産業医の意見書フォーマットの記事で解説しています。
- 就業上の措置が必要かどうか
- 措置が必要な場合の内容(就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少など)
- 措置の期間と、見直しの時期の目安(実務上の一般的な整理)
- 配慮が必要な事項
- 診断名や検査値などの詳しい医学的情報ではなく、就業上の措置に必要な内容に絞られているか
- 意見の内容に不明な点があるとき、確認できる連絡先
面接指導の結果は、事業者が記録しておかなければなりません(労働安全衛生法第66条の8第3項)。
受け取った意見を、顧問先の判断につなげるときの整理
事業者は、医師の意見を勘案し、必要があると認めるときは、労働者の実情を考慮して、就業場所の変更などの措置を講じます。あわせて、医師の意見を衛生委員会などに報告するなど、適切な措置を講じなければなりません(労働安全衛生法第66条の8第5項)。措置を決めるのは事業者です。
社労士に相談があったときは、意見の内容を就業規則や労働契約と照らして、顧問先が判断しやすいように整理する場面が考えられます。産業医が勧告の形で意見を出した場合、事業者は勧告を尊重しなければならず、内容などを衛生委員会等に報告します(同法第13条第5項・第6項)。個別の事案の法的な判断や医学的な判断は、この記事では扱いません。

連携で注意すること|守秘義務・個人情報・本人の同意
産業医との連携では、従業員の健康に関する情報を扱います。守秘義務と個人情報の取扱いを、条文と指針で確認します。
具体的には、健康診断・面接指導・ストレスチェックに関わった人の守秘義務、厚生労働省の指針が示す心身の状態の情報の3つの分類、情報を渡すときの「加工」、情報を理由にした不利益な取扱いを行わないことの4点を整理します。
健康診断・面接指導・ストレスチェックに関わった人の守秘義務
守秘義務については、次の2つの条文があります。
- 労働安全衛生法第105条:健康診断、面接指導、ストレスチェックなどの実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならない
- 社会保険労務士法第21条:開業社会保険労務士または社会保険労務士法人の社員は、正当な理由がなくて、その業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、または盗用してはならない。開業社会保険労務士または社会保険労務士法人の社員でなくなった後も同様
顧問先から受け取る情報が、どちらの条文の対象になるかは、その情報の出どころによって変わります。この記事では断定せず、情報を受け取る前に、顧問先と取扱いの範囲を確認しておくことをすすめます。
厚生労働省の指針が示す、心身の状態の情報の3つの分類
厚生労働省の「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」は、事業者が取り扱う心身の状態の情報を、次の3つに分類しています。
- 分類①:労働安全衛生法令に基づき、事業者が必ず取り扱わなければならない情報。例は、健康診断の受診・未受診の情報、面接指導の申出の有無、健康診断や面接指導の事後措置について医師から聴取した意見など
- 分類②:労働安全衛生法令に基づき、事業者が本人の同意を得ずに収集できるが、事業場ごとの取扱規程で内部の適正な取扱いを定めて運用することが適当な情報。例は、法定の項目の健康診断の結果、長時間労働者や高ストレス者への面接指導の結果など
- 分類③:労働安全衛生法令で事業者が直接取り扱うことが規定されていないため、あらかじめ本人の同意を得ることが必要な情報。例は、法定外項目の健康診断の結果、保健指導の結果、健康相談の結果、職場復帰のための面接指導の結果、治療と仕事の両立支援等のための医師の意見書、通院状況など
分類③の情報を事業者などが収集するときは、個人情報の保護に関する法律第20条第2項に基づき、本人の同意を得なければなりません。ただし、指針は、同項各号に該当する場合は、あらかじめ本人の同意は不要としています。
取扱規程は、衛生委員会等を活用して労使関与のもとで定めます。衛生委員会等を設置する義務がない常時50人未満の事業場では、関係労働者の意見を聴く機会(労働安全衛生規則第23条の2)を活用するなどして意見を聴いたうえで、取扱規程を策定し、労働者と共有します。
情報を渡すときは「加工」する
指針は、心身の状態の情報を他の人に提供するときに、目的の達成に必要な範囲で使われるよう変換することを「加工」と呼んでいます。たとえば、健康診断の結果そのものではなく、所見の有無や、就業上の措置に係る医師の意見に置き換えます。加工は、主に医療職種を配置している事業場での実施が想定されています。
今回確認した範囲では、指針は、社労士のような外部の専門家に情報を渡すときの同意の取り方を、個別には定めていません。顧問先から相談を受けるときは、必要な範囲に絞って受け取ることを基本にし、本人への説明と同意が必要かどうかは、顧問先の取扱規程と個別の事情で確認します。
情報を理由にした不利益な取扱いは行わない
指針は、心身の状態の情報の取扱いに労働者が同意しないことを理由とした不利益な取扱いや、健康確保措置と安全配慮義務の履行に必要な範囲を超えた不利益な取扱いを、あってはならないとしています。次の措置は、一般的に合理的なものとはいえず、事業者は原則として行ってはならないとされています。
- 情報の内容や、取扱いに同意しないことを理由とした解雇
- 期間を定めて雇用される人について、契約の更新をしないこと
- 退職勧奨
- 不当な動機・目的による配置転換や、職位(役職)の変更
- そのほか、労働契約法などの労働関係法令に違反する措置
顧問先に産業医がいないとき|従業員50人未満の相談先
顧問先の多くが従業員50人未満の中小企業という社労士にとって、産業医がいない場合の健康管理の相談は身近な課題です。産業医がいない事業場の相談先を整理します。
50人未満の事業場には産業医の選任義務はないものの、医師などに健康管理を行わせる努力義務があることを確認したうえで、地域産業保健センターで相談できることと、継続的な体制づくりのための産業医の選任や外部への委託という選択肢を紹介します。
50人未満は産業医の選任義務はないが、医師などに健康管理を行わせる努力義務がある
産業医の選任義務があるのは、常時50人以上の労働者を使用する事業場です(労働安全衛生法第13条、同法施行令第5条)。50人未満の事業場には、産業医の選任義務はありません。
一方、労働安全衛生法第13条の2は、50人未満の事業場について、労働者の健康管理等の全部または一部を、医学に関する知識を有する医師などに行わせるように努めなければならないと定めています(努力義務)。この医師などに対しても、必要な情報を提供するよう努めなければなりません(同条第2項)。
50人未満の会社に必要な対応については、以下の記事で詳しく解説しています。
>>産業医は50人未満でも必要?選任義務の有無と、会社がやるべきことを解説
地域産業保健センターで相談できること
独立行政法人労働者健康安全機構の地域窓口(地域産業保健センター)は、労働者数50人未満の小規模事業場の事業者や労働者に対して、次の事業を原則として無料で提供しています。
- 長時間労働者への医師による面接指導の相談
- 健康相談窓口の開設(医師や保健師が、健康診断結果に基づいた健康管理、作業関連疾患の予防方法、メンタルヘルスに関することなどの相談に応じる)
- 個別訪問による産業保健指導の実施
- 産業保健情報の提供
- そのほか、労働者の健康管理や産業保健に関する相談
連絡先は、お近くの地域窓口(地域産業保健センター)、または各都道府県の産業保健総合支援センターです。顧問先で健康面の相談が出たときに、相談できる医師がいない場合は、まず地域窓口の利用を案内する方法があります。
継続的な体制づくりには、産業医の選任や外部への委託も選択肢
継続して医師の意見を聴ける体制が必要な場合は、50人未満でも、産業医を任意で置く、外部に委託するといった選択肢があります。選び方は中小企業の産業医の選び方で解説しています。
産業医の選任から月次の運用までを外部に任せる場合は、産業医サービスの外部委託も選択肢のひとつです。原則月1回の訪問(要件によっては2か月に1回)で職場巡視や面談などを行い、すでに産業医や保健師がいる場合は、切り替えずに連携する形や、事務作業だけを委託する形もあります。

まとめ
社労士と産業医は、根拠になる法律が異なります。条文で確認できた範囲では、社労士は労働・社会保険に関する法令に基づく書類の作成・提出手続、帳簿書類の作成、労務管理などの相談・指導を、産業医は医学に関する専門的知識を必要とする事項を担います。
連携が生じるのは、産業医の選任・変更、健康診断・ストレスチェックの後、長時間労働者の面接指導、休職・復職、規程の整備の5つの場面です。産業医に情報を渡すのは事業者で、医師の意見を聴いて措置を決めるのも事業者です。連携するときは、健康情報を必要な範囲に絞り、本人の同意が必要な情報かどうかを確認します。
顧問先に産業医がいない従業員50人未満の事業場では、地域産業保健センターの利用を案内し、継続的な体制が必要になったら産業医の選任や外部への委託を検討しましょう。

