本記事では、ストレスチェックで高ストレス者が出た後の具体的な対応フローと実務を解説します。「高ストレス者が出たが、面接指導から就業上の措置まで具体的に何をすべきかわからない」とお悩みではないでしょうか。
この記事を読めば、法的義務の確認から医師面接指導の進め方、就業上の措置を決定するまでの流れをステップごとに理解できます。実務でつまずきやすいポイントを踏まえてわかりやすくお伝えします。

ストレスチェックで「高ストレス者」通知時の人事担当者がとるべき対応

ストレスチェックで高ストレス者が出た場合、企業は労働安全衛生法に基づいた適切な対応が求められます。これは従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぎ、健全な職場環境を維持するための重要な取り組みです。しかし、具体的に何をすべきかわからず、対応に悩む人事担当者の方も少なくありません。
面接指導の申し出があった場合の対応フローから、就業上の措置を決定するまでの具体的なステップまで、人事担当者が知っておくべきポイントを解説します。
まずは法的義務と対応フローの全体像を把握する
高ストレス者への対応は、労働安全衛生法で定められた企業の義務であり、その中心となるのが医師による面接指導です。事業者は、ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定された従業員に対して、医師による面接指導を受ける機会を提供しなくてはなりません。ストレスチェックの実施から結果への対応までの全体像は、以下の記事にまとめています。
>>ストレスチェックとは?実施義務から手順、外部委託の選び方まで解説
ただし、面接指導を受けるかどうかは従業員本人の意思に委ねられています。また、プライバシー保護の観点から、誰が高ストレス者であるかという情報は、本人が面接指導を申し出て初めて企業側に伝わる仕組みです。
高ストレス者が確認された際に企業がとるべき対応は、下記の手順で進めるのが一般的です。
- 高ストレス者と判定された従業員への面接指導の申し出勧奨
- 申し出があった場合、医師による面接指導を設定(申し出からおおむね1カ月以内が目安)
- 面接指導の実施後、担当した医師から意見を聴取
- 医師の意見を参考に、必要に応じて就業上の措置を検討・決定
- 個人への対応と並行し、集団分析結果を基にした職場環境の改善を実施
面接指導の「申し出の有無」で企業の対応は分岐する
従業員から面接指導の申し出があるかないかで、その後の企業の対応は大きく変わります。申し出があった場合は面接指導の実施が義務となりますが、申し出がなかった場合に義務は発生しません。
それぞれのケースにおける企業の対応を、下表に整理します。
| 申し出の有無 | 企業の対応 |
|---|---|
| あった場合 | ・労働安全衛生法に基づき、医師による面接指導を実施する義務が発生する ・事業者は速やかに医師を手配し、面接指導の場を設定する必要がある |
| なかった場合 | ・面接指導の実施義務は発生しない ・ただし、企業には従業員に対する安全配慮義務があるため、何もせず放置することは望ましくないと考えられている ・改めて面接指導の利用を促すなど、本人の健康状態に配慮した対応が求められる |
申し出がない、または拒否された場合の具体的な対応については、別の記事で詳しく解説しています。
>>従業員がストレスチェックの面談を受けないのはなぜ?人事の対応と法的リスクを解説
【実践】医師による面接指導は誰に依頼し、どう進めるか
高ストレス者から面接指導の申し出があったら、企業は速やかに面接を実施できる医師を手配する必要があります。特に産業医の選任義務がない50名未満の事業場や、産業医がいても精神科・心療内科が専門でない場合、医師の手配は人事担当者の大きな負担になりがちです。
ストレスチェックの実施から高ストレス者の抽出、そして医師による面接指導の手配までを一貫してサポートする外部サービスを活用することも、有効な選択肢のひとつです。専門家の支援を受けることで、担当者の負担を軽減し、法令に沿った適切な対応をスムーズに進められます。外部に医師の面接指導を依頼する場合の費用の考え方は、以下の記事で確認できます。
>>ストレスチェックの面接指導費用|相場がない理由と見積もり5つの確認点
面接指導を実施する医師の探し方と中小企業の課題
面接指導は、労働者の事業場における労働安全衛生に関する知識が豊富な医師が実施することが望ましいとされています。必ずしも事業場の産業医に限定されるわけではなく、要件を満たす医師であれば対応できます。
医師を探す際の主な依頼先は、以下のとおりです。
- 事業場の産業医
- 地域の産業保健総合支援センター(さんぽセンター)からの紹介
- 外部のメンタルヘルス対策支援機関に所属する医師
特に中小企業では、「ストレスチェックは実施できても、いざという時に面接指導を担う医師がいない」という課題に直面しやすい傾向があります。申し出を受けてから慌てて医師を探し始めると、調整に時間がかかり、対応が遅れてしまう可能性があります。あらかじめ相談できる医師や機関を確保しておくことが、円滑な運用の鍵といえます。
医師への依頼から面接実施までの流れと注意点
面接指導を円滑に進めるためには、医師への適切な情報提供と、従業員本人への丁寧な説明が重要です。プライバシーに配慮しながら、必要な手続きを計画的に進める必要があります。
医師への依頼から面接実施までの一般的な流れは、下記のとおりです。
- 従業員本人から面接指導の申し出を正式に受ける
- あらかじめ選定しておいた医師へ面接指導を依頼する
- 本人の同意を得た上で、医師にストレスチェックの結果や勤務状況などの情報を提供する
- 医師および従業員と面接の日時・場所(対面またはオンライン)を調整する
- 決定した内容を従業員本人に通知し、面接指導を実施する
面接指導を進める上での注意点を、以下にまとめました。
- プライバシーの保護: 医師に提供する業務情報やストレスチェック結果は、個人情報です。提供にあたっては、目的を説明した上で必ず本人の同意を得る必要があります。
- オンラインでの実施: 情報通信機器を用いたオンラインでの面接指導も認められています ※。ただし、実施する際には厚生労働省が示す要件を満たす必要があります。
- 実施時期の目安: 面接指導は、従業員からの申し出があった後、おおむね1カ月以内に実施することが望ましいとされています ※。
面接指導後から就業上の措置決定までの3ステップ

医師による面接指導が終わると、企業は従業員の健康を守るための具体的なアクションに移ります。医師の専門的な意見を聴取し、それを基に職場での働き方を調整する「就業上の措置」を検討・決定するプロセスです。この段階は、従業員の不利益にならないよう、慎重に進める必要があります。
ステップ1:医師から意見を聴取する
面接指導が終わったら、企業は実施した医師から就業上の措置に関する意見を聴く必要があります。これは労働安全衛生法で定められた義務であり、面接指導後、遅滞なく行わなければなりません。
医師からは、主に以下の内容について意見を聴取します。意見は口頭だけでなく、後々の記録として残るよう、書面(意見書)で受け取ることが一般的です。
- 当該労働者の勤務の状況
- 当該労働者の心理的な負担の状況
- その他心身の状況
- 就業上の措置に関する意見(通常勤務可、要就業制限、要休業など)
ステップ2:医師の意見を参考に就業上の措置を検討・決定する
企業は医師の意見を参考にし、従業員本人の状況を十分に考慮して、就業上の措置の内容を検討します。ここで重要なのは、企業は医師の意見を「参考にする」義務はありますが、その意見に法的に拘束されるわけではないという点です。
とはいえ、医学的な知見に基づく専門家の判断は最大限尊重するべきと考えられています。医師の意見、従業員本人の意見、そして職場の実情(代替業務の有無など)を総合的に勘案し、人事担当者だけでなく、必要に応じて直属の上司や経営層も交えて慎重に判断することが求められます。
ステップ3:決定内容を本人に伝え、措置を実施する
決定した就業上の措置は、従業員本人に丁寧に説明し、十分な理解と納得を得た上で実施に移します。一方的な通告ではなく、なぜこの措置が必要なのか、会社の配慮や期待を伝える対話の場を設けることが重要です。
この際、事業者は面接指導の結果を理由として、労働者に対して解雇や雇い止め、不当な配置転換といった不利益な取扱いをしてはならないと法律で定められています。措置の実施後も、定期的に本人と面談を行うなど、状況の変化を継続的にフォローアップしていくことが大切です。
医師の意見書をどう判断?就業上の措置の具体例

医師から提出される意見書には、「通常勤務可」「要就業制限」「要休業」といった区分で、就業上の措置に関する判断が記載されているのが一般的です。ここでは、「就業制限」と「休業」が必要と判断された場合に、企業がとりうる措置の具体例を解説します。
「就業制限」が必要な場合の措置例(労働時間の短縮、業務内容の変更など)
就業制限とは、現在の仕事を続けながら、心身への負担を軽減するために働き方を調整する措置のことです。従業員の健康状態と業務内容を照らし合わせ、適切な措置を講じることが求められます。
就業制限が必要と判断された場合の具体的な措置例を、以下に示します。
- 時間外労働の禁止または制限
- 労働時間の短縮(時短勤務)
- 深夜業の回数の削減
- 出張の制限
- 業務内容の変更(責任の重い業務から外す、より負担の少ない業務へ転換するなど)
- 本人の同意を得た上での配置転換
どの措置が最も適切かは、本人の症状や職場の状況によって異なります。医師や本人と相談しながら、柔軟に検討することが重要です。
「休業」が必要な場合の措置例
休業は、就業を継続することが従業員の健康回復を著しく妨げると医師が判断した場合などに検討される、より慎重な対応です。休業が必要との意見が出た場合、企業は従業員が安心して療養に専念できる環境を整える必要があります。休職に至った場合の企業の対応や復職支援の進め方は、以下の記事で詳しく扱っています。
>>ストレスチェック、休職者は対象?法的義務と復職支援のポイント
休業措置をとる際の企業の対応例は、次のとおりです。
- 休業中のサポート: 傷病手当金などの社会保険制度について情報提供し、申請手続きを支援します。また、本人の負担にならない範囲で定期的に連絡を取り、孤立させない配慮が求められる場合もあります。
- 復職支援: 療養後の職場復帰を見据え、復職支援プログラム(リワーク)の情報提供や、産業医との連携による復職プランの作成などを検討します。スムーズな職場復帰を支援することも、企業の重要な役割といえます。
高ストレス者対応を一過性にしないための戦略的視点

高ストレス者への個別対応は重要ですが、それだけで終わらせてしまうのは非常にもったいないといえます。ストレスチェックの結果を組織全体の課題として捉え、より働きやすい職場環境づくりへと繋げていく視点が、企業の持続的な成長には不可欠です。
集団分析結果を活用した職場環境改善への第一歩
個人の対応と並行して、ストレスチェックの集団分析結果を活用した職場環境の改善に取り組むことが重要です。集団ごとのストレス状況を分析することで、組織が抱える健康リスクや課題を客観的に把握できます。
例えば、特定の部署で高ストレス者の割合が突出していないか、あるいは「仕事の量的負担」や「上司の支援」といった特定のストレス要因の点数が著しく悪化していないかなどを確認します。これらのデータは、具体的な職場環境改善策を立案するための貴重な根拠となります。
集団分析から見えた課題に対し、業務プロセスの見直しやコミュニケーション研修の実施といった対策を講じることが、根本的な問題解決への第一歩です。

企業の持続的成長に繋がる健康経営への展開
高ストレス者への対応や職場環境の改善は、単なる義務やコストではありません。従業員の心身の健康を守り、いきいきと働ける環境を整えることは、企業の持続的成長を支える「健康経営」そのものです。
ストレスチェック制度への積極的な取り組みは、経済産業省が推進する「健康経営優良法人」の認定基準にも含まれています。従業員のメンタルヘルス対策を推進することは、生産性の向上、人材の定着、企業イメージの向上といった多くのメリットに繋がる可能性があります。
目先の義務対応に留まらず、企業の未来を創る戦略的な投資として、健康経営を推進していくことが期待されます。ストレスチェック後の高ストレス者対応は、法令遵守はもちろん、従業員の健康を守り、企業の成長を支える上で欠かせない取り組みです。しかし、人事担当者様だけですべてを担うのは大きな負担となります。
産業医の選任からストレスチェックの実施、面接指導後のフォローアップ、そして健康経営の推進まで、専門家のサポートを受けながら体制を整えたいとお考えでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。
>>法令遵守から健康経営まで、貴社の課題に合わせたサポートをご提案
まとめ
ストレスチェックで高ストレス者が出た場合、企業は医師の意見を参考に、労働時間の短縮や業務内容の変更といった適切な就業上の措置を講じることが重要です。こうした個別対応と並行し、集団分析の結果を職場環境の改善に活かすことが、企業の持続的成長を支える健康経営へと繋がります。
法令遵守はもちろん、従業員が安心して働ける体制づくりを専門家のサポートのもとで進めたいとお考えの場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

