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休職期間満了で自然退職にする前に|就業規則の定めと満了前の進め方

休職期間満了で自然退職にする前に|就業規則の定めと満了前の進め方

休職中の従業員の休職期間の満了が近づき、「復職できない場合は自然退職として扱ってよいのか」と迷っていませんか。この記事では、休職期間満了による「自然退職(退職扱い)」の仕組み、就業規則に定めておくこと、満了前にやっておくこと、避けたい進め方を整理します。

従業員50人未満の会社の人事・総務担当者と、顧問先から相談を受ける社労士の方に向けて、厚生労働省の資料とe-Gov法令検索で実際に確認できた範囲だけをまとめました。自然退職として扱えるかどうかは、休職に至った事情や就業規則の内容によって判断が分かれます。個別の事案は、社労士や弁護士に確認したうえで進めてください。

✓ この記事でわかること

・自然退職(退職扱い)の仕組みと、解雇との違い
・就業規則に定めておくこと
・満了前にやっておく4つのステップ
・避けたい3つの進め方
・産業医がいない50人未満の会社の相談先

目次

休職期間満了による「自然退職」とは?解雇との違い

休職期間が満了しても復職できないときに、就業規則の定めによって退職として扱うことを、この記事では「自然退職(退職扱い)」と呼びます。会社が改めて解雇を通知する形ではなく、あらかじめ定めた退職の事由に当てはまったことで、労働契約が終わる扱いです。

自然退職の基本的な考え方

厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)の解説には、「休職の定義、休職期間の制限、復職等については、労基法に定めはありません」と書かれています。つまり、休職制度をどう設けるか、休職期間が満了したらどうなるかは、会社が就業規則などで定める部分です。

ただし、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は、休業の最長期間が満了した後に雇用契約の解除を行う場合について、労働基準法や労働契約法等の関係法令上の制約に留意するよう求めています。

モデル就業規則では、休職期間の満了と退職の関係が次のように定められています。

  • 第9条第3項:第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする
  • 第52条第1項第3号:第9条に定める休職期間が満了し、なお休職事由が消滅しないときは、退職とする

第9条第3項が対象にしているのは、第1項第1号の「業務外の傷病による欠勤」が続いたことによる休職です。

自然退職と解雇の違いを整理する

自然退職と解雇の違いを、確認できた条文の範囲で整理します。自然退職(退職扱い)の特徴は次のとおりです。

  • 就業規則に定めた退職の事由に当てはまったときに、労働契約が終わる扱いになる
  • 休職の期間や満了時の扱いは、労働基準法に定めがなく、会社が就業規則などで定める

解雇の特徴は次のとおりです。

  • 会社の意思表示によって、労働契約を終わらせるもの
  • 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、権利の濫用として無効になる(労働契約法第16条)
  • 少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払う必要がある。天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合や、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合は例外があり、その事由について行政官庁の認定を受ける必要がある(労働基準法第20条)

自然退職として扱う場合に、解雇の予告や解雇の制限に関する規定がどう関わるかは、休職に至った事情や就業規則の内容によって判断が分かれます。ここでは断定せず、個別の事案は社労士や弁護士に確認することをおすすめします。

自然退職として扱えるかは、個別の事情で判断が分かれる

厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は、休職した労働者の復職の可否について、さまざまな判例が出されていると述べています。

そのなかには、職種を限定した雇用契約を結んでいる場合と、限定しない契約の場合とで、判断が異なるものがあるとも書かれています。トラブルを防ぐために、法律の専門家等に相談して対応することが求められる、というのが手引きの立場です。

また、業務上の負傷や疾病で療養のために休業する期間とその後30日間は、解雇が制限されています(労働基準法第19条。ただし書きあり)。休職の原因に業務との関わりが考えられる場合は、自然退職として扱えるかを含めて、個別の判断が必要です。

休職期間満了で困らないために、就業規則に定めておくこと

自然退職で迷わないためには、休職期間が満了したときの扱いを、あらかじめ就業規則に書いて従業員に知らせておくことが土台になります。

ここでは、退職に関する事項を就業規則に書く必要があることを確認したうえで、定めておく事項の一覧、モデル就業規則の条文と架空の条文例、就業規則を作成・変更するときの手続きと周知の方法を順に整理します。

退職に関する事項は就業規則に書く必要がある

労働基準法第89条第3号は、「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」を、就業規則に書く事項として定めています。この条文が就業規則の作成と届出を義務づけているのは、常時10人以上の労働者を使用する使用者です。

労働契約法第7条は、労働契約を結ぶときに、合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件によるとしています(労働契約で異なる合意をした部分などの例外があります)。

さらに、手引きは、休業の最長期間が満了した後に雇用契約の解除を行う場合は、労働基準法や労働契約法等の関係法令上の制約に留意し、労使の十分な協議によって決めたうえで、あらかじめ就業規則等に定めて周知しておくことが望ましい、としています。

就業規則に定めておくことの一覧

厚生労働省のモデル就業規則を参考にすると、休職と退職に関して次のような事項が定められています。

  • 休職になる場合:業務外の傷病による欠勤が一定期間を超え、療養が必要なとき、など
  • 休職期間:所定の期間(モデルでは期間を空欄にして、会社ごとに定める形)
  • 休職事由が消えたとき:原則として元の職務に復帰させる。元の職務への復帰が困難または不適当な場合は、他の職務に就かせることがある
  • 休職期間が満了したとき:満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする
  • 退職の事由:休職期間が満了し、なお休職事由が消滅しないときを、退職の事由の一つとして書く

休職期間の上限をどう決めるか、診断書の出し方をどう定めるかは、別の記事で扱います。ここでは、満了したときの扱いを書いておくことに絞ります。

モデル就業規則の条文と、架空の条文例

モデル就業規則の第9条第3項と第52条第1項第3号は、前の節に書いたとおりです。これをもとにした、架空の条文例を次に示します。自社の休職制度に合わせて、社労士に確認しながら整えてください。

架空の条文例です。

(休職期間満了時の退職)

第〇条 第〇条第1項第1号により休職した従業員が、休職期間が満了してもなお休職事由が消滅しないときは、休職期間の満了をもって退職とする。

2 前項により退職する従業員から請求があったときは、会社は、使用期間、業務の種類、地位、賃金又は退職の事由のうち、請求された事項を記載した証明書を遅滞なく交付する。

第2項は、モデル就業規則の第52条第2項(請求に基づき、使用期間、業務の種類、地位、賃金又は退職の事由を記載した証明書を遅滞なく交付する)を参考にしています。

就業規則の作成・変更の手続きと周知

就業規則を作成・変更するときは、次の手続きが必要です。

  • 労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴く(労働基準法第90条第1項)
  • 届出をするときは、その意見を記した書面を添付する(同条第2項)
  • 常時各作業場の見やすい場所へ掲示する、備え付ける、書面を交付するといった方法で、労働者に周知する(労働基準法第106条第1項)

就業規則の見直しは、社労士に相談しながら進めると抜けが減ります。

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休職期間満了が近づいたときにやっておくこと4ステップ

休職期間満了前の4ステップ(満了日の把握、本人への書面通知、復職意思の確認、面談内容の記録)を順に示した図

就業規則が整っていても、満了が近づいてからの進め方は別に準備が必要です。満了前にやっておくことを、次の4つのステップで整理します。

  • ステップ1:休職期間の満了日を正確に把握する
  • ステップ2:本人に、満了日と今後の流れを書面で伝える
  • ステップ3:復職の意思を確認し、復職可否を確認する流れの入口を押さえる
  • ステップ4:やりとりを記録に残す

ステップ1:休職期間の満了日を正確に把握する

まず、休職の開始日と、就業規則に定めた休職期間から、満了日を確認します。あわせて、次の点も就業規則で確認しておきます。

  • 休職の対象になる傷病かどうか(モデル就業規則は、業務外の傷病を想定している)
  • 途中で出勤した期間や、休職を繰り返した場合の扱いについて、就業規則に定めがあるか
  • 休職期間の満了時の扱いとして、どのような文言で定めているか

ステップ2:本人に、満了日と今後の流れを書面で伝える

手引きは、休業が始まるときに、休業の最長(保障)期間などの情報を本人に伝えて支援するよう勧めています。満了が近づいたら、改めて次の内容を書面で伝えます。

  • 休職期間の満了日
  • 満了日までに確認・提出してもらいたいこと
  • 休職期間が満了したときの扱い(就業規則の該当条文)
  • 連絡先と、相談できる窓口

通知の時期について、何か月前という決まりを示した一次情報は、今回確認できていません。就業規則の内容と本人の状況に合わせて、余裕をもって伝えてください。休職中の連絡の取り方や、休職期間の延長を検討する流れについては、以下の記事で扱っています。
>>適応障害で従業員が休職|人事担当者の対応と復職支援の進め方

ステップ3:復職の意思を確認し、復職可否を確認する流れの入口を押さえる

手引きでは、休業中の労働者から職場復帰の意思が伝えられると、事業者は、主治医による職場復帰が可能という判断が書かれた診断書の提出を求めるとされています。診断書には、就業上の配慮に関する主治医の具体的な意見を含めてもらうことが望ましい、とも書かれています。

ここで押さえておきたいのは、次の点です。

  • 主治医の診断書は、日常生活での回復の程度をもとに判断していることが多く、職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとは限らない(手引き)
  • 職場復帰前の面談などは、実際の職場復帰までに十分な準備期間を設定して、計画的に行うことが望ましい(手引き)
  • 満了の日に近づいてから初めて動き出すのではなく、早めに本人の意思を確認する

復職の可否をどう判断するか、産業医の面談をどう使うかについては、以下の記事で詳しく扱っています。
>>産業医の復職面談ガイド|再休職を防ぐ人事の対応と判断基準
>>うつ病の復職支援|人事担当者が知るべき手順と産業医不在時の対応

ステップ4:やりとりを記録に残す

手引きは、職場復帰の可否や支援プランについての話し合いの結果を、「職場復帰支援に関する面談記録票」(様式例)などにまとめ、関係者が内容を互いに確認しながら進めることが望ましい、としています。満了前の面談や連絡も、同じように記録を残しておくと、あとで経緯を確認できます。

記録に残す項目の例は次のとおりです。

  • 面談や連絡の日時、方法(対面・電話・書面など)
  • 出席者(会社側と本人)
  • 本人の復職の意思
  • 会社から説明した内容(満了日、就業規則の該当条文など)
  • 本人からの質問や希望
  • 今後の予定と、次に連絡する日

自然退職で避けたい3つの進め方

満了が近づくと、焦って進め方が雑になりがちです。とくに避けたい進め方を3つ挙げます。

  • 就業規則に根拠がないまま、自然退職として扱う
  • 満了直前に突然伝える、口頭だけで済ませる
  • 業務上の傷病の可能性を確認せずに進める

避けたい進め方1:就業規則に根拠がないまま自然退職として扱う

休職期間満了時の扱いが就業規則に書かれていないのに、退職として扱おうとするのは避けたい進め方です。手引きは、最長期間が満了した後の雇用契約の解除について、あらかじめ就業規則等に定めて周知しておくことが望ましいとしています。定めがないまま進めると、本人に扱いの根拠を示して説明することが難しくなります。

就業規則に定めがない、または内容が不十分なときは、扱いを決める前に社労士や弁護士に相談してください。

避けたい進め方2:満了直前に突然伝える、口頭だけで済ませる

満了の直前になって初めて退職の扱いになる可能性を伝えたり、重要な連絡を口頭だけで済ませたりすると、何を、いつ伝えたのかが残りません。本人も、状況を整理して今後を考える時間がとれません。

書面で満了日と今後の流れを伝えること、やりとりを記録に残すことが、代わりの進め方になります(前のステップ2とステップ4を参照)。

避けたい進め方3:業務上の傷病の可能性を確認せずに進める

休職の原因が、業務に関わる負傷や疾病である可能性を確認しないまま進めるのも避けたい進め方です。たとえば、長時間労働やハラスメントなどが休職の原因に関わっていないかを、休職に至る経緯から確認します。

⚠️ 業務上の傷病の可能性があるとき

業務上の負傷や疾病で療養のために休業する期間とその後30日間は、解雇が制限されています(労働基準法第19条。ただし書きあり)。業務との関わりが考えられるときは、自然退職として進める前に、社労士や弁護士に相談してください。

産業医がいない50人未満の会社が、満了前に相談できる先

産業医の選任義務があるのは、常時50人以上の労働者を使用する事業場です。産業医の選任義務の詳しい内容については、以下の記事で扱っています。
>>産業医の選任義務とは?50名以上の罰則・費用・探し方を解説

50人未満の会社では、休職者の対応を人事・総務の担当者が一人で抱えがちです。

手引きは、産業医が選任されていない50人未満の小規模事業場では、人事労務管理スタッフなどが主治医と連携しながら、地域産業保健センターなどの事業場外の資源も活用して、検討を進めることが必要としています。

地域産業保健センターを活用する

労働者健康安全機構(JOHAS)の地域窓口(地域産業保健センター)は、労働者数50人未満の小規模事業場の事業者や労働者に対して、次の事業を原則として無料で提供しています。

  • 長時間労働者への医師による面接指導の相談
  • 健康相談窓口の開設(メンタルヘルスに関することなどについて、医師や保健師が健康相談に応じる)
  • 個別訪問による産業保健指導の実施
  • 産業保健情報の提供

休職や復職に関する相談が対象になるかどうかは、事前に最寄りの窓口へ確認してください。

顧問の社労士や弁護士に相談する

自然退職として扱えるか、手続きをどう進めるかといった労務・法律の判断は、顧問の社労士や弁護士に相談します。手引きも、復職の可否についてさまざまな判例が出されていることから、法律の専門家等への相談を求めています。

外部の産業医や医師に意見を求める

主治医の診断書とは別に、産業保健の視点から医師の意見を聞きたいときは、外部の産業医や医師に相談する方法もあります。意見書の役割や様式については、以下の記事で解説しています。
>>産業医の意見書とは?効力や診断書との違い、対応フローまで解説
>>産業医の意見書フォーマット|厚生労働省の様式の有無と場面別の記入例

Medpartnerは、医師コミュニティを基盤にしているため、全国の事業所に産業医をアサインでき、精神科・心療内科の医師を派遣することもできます。すでに産業医や保健師がいる場合は、切り替えずに連携する形もとれます。詳しくは産業医サービスの外部委託をご覧ください。

休職期間満了と自然退職に関するよくある質問

休職期間満了と自然退職について、就業規則がない場合の考え方、退職の事由の証明書を求められたときの対応、退職後の社会保険などの手続きの確認先に関する質問をまとめました。

従業員が10人未満で、就業規則がない場合はどうすればよいですか?

労働基準法第89条が就業規則の作成と届出を義務づけているのは、常時10人以上の労働者を使用する使用者です。ただし、休職の期間や満了時の扱いが決まっていないと、いざというときに本人と会社の認識がそろいません。

まず、自社で休職についてどのような取り決めをしているのか(労働契約書や社内の書面など)を確認してください。そのうえで、満了時の扱いをどう決めるか、実際の事案をどう進めるかを、社労士や弁護士に相談することをおすすめします。

退職する従業員から、退職の事由の証明書を求められたらどうしますか?

労働者が、退職の場合に、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金、退職の事由(解雇の場合はその理由を含む)について証明書を請求したときは、使用者は遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法第22条第1項)。証明書には、労働者が請求しない事項を書いてはいけません(同条第3項)。

請求された事項だけを記載し、書き方に迷うときは社労士に確認してください。

退職後の社会保険などの手続きは、どこに確認すればよいですか?

退職に伴って、健康保険、年金、雇用保険などの手続きが必要になることがあります。具体的な条件や期間は、加入している健康保険や年金、雇用保険のそれぞれの窓口、または顧問の社労士に確認してください。この記事では、条件や金額には触れていません。

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まとめ

休職期間満了による自然退職は、休職期間が満了したときの扱いを就業規則に定め、従業員に周知しておくことが土台になります。休職の期間や満了時の扱いは労働基準法に定めがなく、会社が就業規則などで定める部分だからです。

満了が近づいたら、満了日の把握、書面での通知、復職の意思の確認、記録という順に、余裕をもって進めましょう。就業規則に根拠がないまま進めることや、直前に口頭で伝えることは避けてください。休職の原因が業務に関わる可能性があるときや、自然退職として扱えるか迷うときは、社労士や弁護士に相談してから進めてください。

産業医がいない会社は、地域産業保健センターや外部の医師も活用できます。

参考文献

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この記事を書いた人

整形外科医/産業医

整形外科専門医として急性期病院・クリニックにて保険診療に従事。
現場での診療を通じ、患者・医療者それぞれが抱える課題を認識し、医療とテクノロジーを横断した問題解決に取り組む。
総フォロワー数20万人を超える医師コミュニティ「Elite Doctors」を主宰。
全国、全診療科、あらゆる年代の医師ネットワークと知見を活かした事業共創・医療DX支援・組織開発を行っている。

著書に「クリニック経営者のためのゼロから始めるSEO集患術」等

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