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診断書の費用は会社負担?法令の定めと就業規則で決めておく項目

診断書の費用は会社負担?法令の定めと就業規則で決めておく項目

従業員に診断書の提出を求めるとき、発行費用を会社が払うのか、本人が払うのか。決めていない会社は多く、担当者が迷う場面です。

結論から言うと、今回確認した法令と国の資料には、休職や復職の診断書の費用を誰が負担するかを定めた記載は見つかりませんでした。会社が就業規則などで決めておく項目と考えられます。この記事では、確認できたことと、確認できなかったことを分けて整理します。従業員50人未満の会社の人事・総務担当者に向けて、e-Gov法令検索、厚生労働省の資料、協会けんぽの案内などを実際に読んで確認した範囲だけをまとめました。

診断書の提出方法・確認項目・保管については、以下の記事で扱っています。
>>休職の診断書を会社に提出してもらうとき|受け取り方・郵送・保管を解説

この記事は、費用の負担に絞ります。

✓ この記事でわかること

・診断書の費用の負担者を定めた法令があるか
・会社が提出を求める場合と、本人が申請する場合の考え方
・法定の健診・傷病手当金・労災での費用の扱い
・就業規則で決めておく項目
・費用の扱いに迷ったときの相談先

目次

診断書の費用を誰が負担するか|法令に定めはあるのか

診断書の費用の負担者を直接定めた条文は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。国の資料にも、休職・復職の診断書の費用の負担者を示した記載は確認できませんでした。

診断書の費用の負担者を定めた条文は、確認した範囲では見当たらない

e-Gov法令検索で本文を確認した次の4つの法令には、「診断書」という語が出てきませんでした。

  • 労働基準法
  • 労働契約法
  • 労働安全衛生法
  • 労働安全衛生規則

健康保険法など、ほかの法令や通達は網羅して確認していません。制度ごとの扱いは、後半の「制度ごとに費用の扱いが異なる例」で、確認できた範囲だけ触れます。

国の資料にも、休職の診断書の費用の負担者は書かれていない

診断書に触れている国の資料を3つ確認しました。いずれも、診断書の費用の負担者は書かれていませんでした。

  • 厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版):「診断書」が出てくるのは、第18条第3項と、その解説だけです。第18条第3項は、傷病のため継続して( )日以上欠勤するときは、医師の診断書を提出しなければならない、という例です。解説は、欠勤何日以上で診断書を提出させるかは、各事業場で決めることとしています
  • 厚生労働省・労働者健康安全機構の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(以下、手引き):休業の開始で、主治医が作成した診断書を労働者から提出してもらう流れを示しています。診断書そのものの費用は書かれていません
  • 厚生労働省「確かめよう労働条件」のQ&A(復職の場面):就労可能であることを証明するため、主治医に診断書を作成してもらい、復職の申出とともに会社に提出するのが通常、としています。就業規則に提出を定めている場合も多いと思われる、とも書かれています。費用の負担者は書かれていません

確認した範囲の法令と国の資料に定めが見当たらないため、負担者は会社が決めておく項目と考えられます。就業規則に定めがなく、いま対応が必要な個別の事案は、社労士に確認してください。

会社が提出を求める診断書と、本人が自分で申請する書類|考え方の違い

費用の扱いを考えるときは、誰の必要で取る書類かを分けると整理しやすくなります。確認できた資料は、次の3つの場面で、記載の有無が分かれました。

具体的には、就業規則に基づき会社が提出を求める診断書、会社から主治医への情報提供の依頼、本人が公的な制度を申請するために取る書類の3つです。それぞれについて、確認できた資料に費用の扱いがどう書かれているかを整理します。

就業規則に基づき、会社が提出を求める診断書

継続して欠勤した従業員に診断書を出してもらう場面や、休職・復職を申し出た従業員に診断書を添えてもらう場面です。手引きの参考資料にある規程例(中央労働災害防止協会が作成した一例)では、休業の申請(第2条第2項)と復職の申請(第7条第1項)で、本人が診断書を添付して所属長に提出します。

この2つの条文に、費用の定めはありません。つまり、確認できた資料からは、次のどちらとも言えません。

  • 会社が提出を求める書類だから、会社が負担する
  • 本人の申し出に必要な書類だから、本人が負担する

どちらを選ぶ場合も、就業規則などで先に決め、従業員に伝えておくことが前提になります。休職者への対応全体については、以下の記事で解説しています。
>>適応障害で従業員が休職|人事担当者の対応と復職支援の進め方

復職のときの診断書で確認する事項については、以下の記事を参照してください。
>>産業医の復職面談ガイド|再休職を防ぐ人事の対応と判断基準

会社から主治医へ情報提供を依頼するとき

診断書とは別に、会社が主治医に情報提供を依頼する場面があります。手引きの「主治医との連携の仕方」の項では、次のように書かれています。

  • 「職場復帰支援に関する情報提供依頼書」などを用いて、主治医に情報提供を依頼する場合がある
  • 主治医と直接連絡を取ったり、面会したりする場合もある
  • これらの費用負担は、事前に主治医との間で取り決めておく必要がある

手引きの参考資料の規程例には、会社が主治医に職場復帰時の業務内容などの情報提供を行う条文があり、そこに「費用は会社が負担する」と書かれています。この規程例は、事業場の規模や実態に合わせて作るときの一例であり、どの内容が適切かは事業場ごとに異なる、と注記されています。

依頼の進め方と本人の同意の取り方については、以下の記事で解説しています。
>>復職判定の進め方|会社が確認する項目と判定シートの作り方

本人が公的な制度を申請するために取る書類

傷病手当金や労災保険の請求では、医師の記入や証明が必要になる場面があります。これは会社の就業規則に基づく書類ではなく、健康保険や労災保険の手続きの書類です。費用の扱いも、制度ごとに異なります。次の章で、確認できた範囲を整理します。

制度ごとに費用の扱いが異なる例|法定の健診・傷病手当金・労災

同じ医療機関で受ける診察や書類でも、費用の扱いは制度ごとに分かれます。ここで挙げる内容は、休職や復職の診断書にそのまま当てはまるものではありません。制度ごとに考え方が違うことの例として読んでください。

法令で会社に実施が義務づけられた健診・ストレスチェック・面接指導

法令で会社に実施が義務づけられたものは、会社が費用を負担するとされています。

  • 健康診断:厚生労働省のよくある質問は、労働安全衛生法などで事業者に義務づけられている健康診断の費用は、実施が義務づけられている以上、当然に事業者が負担すべきものとしています
  • モデル就業規則第59条の解説:健康診断の費用は、法で事業者に実施を課している以上、当然、事業者が負担しなければならないとしています
  • モデル就業規則第61条の解説:ストレスチェックと、その結果を踏まえた面接指導の費用も、事業者が負担しなければならないとしています(ストレスチェックは、常時50人未満の事業場では現在は努力義務です。労働安全衛生法附則第4条)

一方で、法定の健診の後の扱いは、すべて会社負担とは限りません。労働者健康安全機構の和歌山産業保健総合支援センターの資料(2020年4月)は、定期健康診断は会社負担、定期健診後の精密検査は診療扱い(一部本人負担)と整理しています。

厚生労働省のよくある質問とモデル就業規則が理由に挙げているのは、法令で会社に実施が義務づけられていることです。休職や復職の診断書は、この整理の対象として書かれていません。

傷病手当金の申請書の、医師が書く欄

協会けんぽの案内は、傷病手当金について、仕事に就けない状態かどうかを、療養担当者の意見等をもとに判断するとしています。厚生労働省の事務連絡(平成26年9月1日)によると、申請書には、医師等の意見書その他の書類を添付します。申請書に医師等の記載を受けたときは、意見書の添付は要りません。

確認できたのは、次の2点です。

  • 協会けんぽの傷病手当金のページ、申請書のページ、よくある質問には、医師に記入してもらう費用の記載は見つかりませんでした
  • 厚生省(当時)の通知(昭和60年3月29日 保険発第27号)には、傷病手当金意見書交付料は、交付の時点で被保険者に療養の給付を行うべき者に請求するものとあります。意見書を紛失して再交付を受けた場合、二度目の費用は被保険者の負担とされています

会社に出す休職の診断書と、傷病手当金の医師記入欄では、費用の扱いが別に定められている可能性があります。古い通知だけでは現在の取扱いは判断できません。従業員が加入している協会けんぽの支部または健康保険組合と、医療機関に確認するよう、本人に案内してください。

労災保険の診断書

業務上や通勤の途中の傷病は、労災保険の対象になります。協会けんぽの案内は、業務上・通勤災害によるものを傷病手当金の支給対象外とし、労災保険の給付対象としています。

労災保険では、栃木労働局のリーフレットが次のように案内しています。

  • 症状が固定したあとに障害給付を請求する場合は、診断書を添付する
  • 病院で診断書代を負担した場合は、その費用を請求できる

栃木労働局のお知らせによると、障害給付の請求書に添付する診断書の記載に伴う文書料は、令和8年6月1日以降の分から改定されると案内されています。金額は、この記事には書きません。

診断書や本人の話から、仕事との関わりが考えられるときは、休職の診断書の費用を決める前に、労災にあたる可能性を確認します。判断に迷うときは、社労士に確認してください。

診断書の費用について、就業規則で決めておく項目

確認した国の資料には負担者の定めが見当たらないため、会社が決めておく項目と考えられます。従業員との認識のずれを防ぐには、あらかじめ決めて、就業規則などに書いておく方法があります。

費用の負担を定めるときの、条文上の位置づけ

労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則の作成と届出を義務づけています。記載する事項の一つが、第5号の「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」です。モデル就業規則の解説も、記載事項の一つに「費用負担関係」を挙げています。

診断書の費用が、この「負担」にあたるかどうかは、条文からは読み取れず、確認できていません。本人に負担させる定めを置くときは、社労士に確認してください。就業規則の作成・変更の手続きと周知については、以下の記事で解説しています。
>>休職期間満了で自然退職にする前に|就業規則の定めと満了前の進め方

休職期間の上限など、休職制度全体の決め方については、以下の記事が参考になります。
>>休職期間の上限に法律の定めはある?就業規則で決める4つの論点を解説

決めておく項目の例

次の項目は、国の資料が求めているものではありません。ここまでに確認した内容から、会社が決めておくとよい項目を整理した例です。

  • 診断書の提出を求める場面:継続欠勤が何日を超えたとき、休職を申し出たとき、復職を申し出たとき(モデル就業規則第18条第3項の例を参考にします)
  • 会社が提出を求める診断書の、費用の負担者
  • 本人が休職や復職を申し出るときに出す診断書の、費用の負担者
  • 会社が指定した医師の診断を求める場合の、費用の負担者
  • 主治医への情報提供依頼の費用:手引きは、事前に主治医と取り決めておくとしています
  • 費用の負担割合と、金額の上限を設けるか
  • 費用の精算方法:領収書の提出の要否と、精算の時期
  • 診断書の再発行や追記を依頼したときの、費用の扱い

傷病手当金や労災保険の書類の費用は、制度ごとの扱いを確認したうえで、就業規則に書くかどうかを決めます。

就業規則の確認リスト。会社指示の場合・自己都合の場合・指定医受診の場合の負担者、費用の負担割合、精算方法を並べた図

本人の給与から差し引く場合の注意

会社が費用を立て替え、あとで本人の給与から差し引く運用も考えられます。労働基準法第24条は、賃金を全額支払うのが原則としています。例外は、法令に別段の定めがある場合と、労使協定(過半数労働組合、なければ過半数代表者との書面の協定)がある場合です。この場合に、賃金の一部を控除して支払うことができます。

⚠️ 給与から差し引く運用にするとき

給与から差し引く運用にするときは、この条文との関係を社労士に確認してください。就業規則に書くだけでよいかどうかは、確認できていません。

費用の扱いに迷ったときの相談先

診断書の費用の扱いに迷ったときは、相談したい内容に応じて相談先を使い分けます。ここでは、就業規則への書き方などを相談できる顧問の社労士、50人未満の事業場が使える地域産業保健センター、医師の意見を聴きたい場面での産業医のスポット契約の3つを紹介します。

産業医の選任義務は、常時50人以上の労働者を使う事業場にあります。選任義務の詳しい内容については、以下の記事で解説しています。
>>産業医の選任義務とは?50名以上の罰則・費用・探し方を解説

50人未満の会社で、費用の扱いに迷ったときの相談先は、次の3つが考えられます。

顧問の社労士

就業規則への書き方、給与から差し引くときの労使協定、個別の事案の扱いは、社労士が相談先になります。医師の意見が必要な場面との分担については、以下の記事で整理しています。
>>社労士と産業医の連携|役割の違いと、連携するとよい5つの場面

地域産業保健センター

労働者健康安全機構は、地域産業保健センターについて、労働者数50人未満の小規模事業場の事業者や労働者に、健康相談窓口の開設などを原則無料で提供していると案内しています。メンタルヘルスに関する健康相談も含まれます。診断書の費用の決め方の相談が対象かどうかは、事前に窓口へ確認してください。

産業医のスポット契約

診断書の費用の負担者は、医師ではなく、会社が決める項目です。一方で、診断書の内容を医師の立場から確認したい場面では、産業医の意見を聴く方法があります。50人未満の会社が単発で頼む形については、以下の記事で解説しています。
>>産業医のスポット契約とは?頼める場面と頼めない場面、50人未満の考え方

診断書と産業医の意見書の違いについては、以下の記事を参照してください。
>>産業医の意見書とは?効力や診断書との違い、対応フローまで解説

Medpartnerは、スポット契約(単発・必要なときだけの依頼)に対応しています。医師コミュニティを基盤にしているため、全国の事業所へ産業医をアサインできます。詳しくは産業医サービスの外部委託をご覧ください。

Medpartner産業医無料相談1

診断書の費用負担に関するよくある質問

ここでは、診断書の費用負担に関するよくある質問をまとめました。

就業規則に、診断書の費用の定めがない場合は、どうすればよいですか?

診断書の費用の負担者を定めた条文は、今回確認した法令では見つかりませんでした。定めがないときに、今回の従業員にどう扱うかは、事情によって変わります。個別の事案は、社労士に確認してください。

扱いを決めたら、診断書を取ってもらう前に、本人へ伝えておきます。そのうえで、今後に備えて、就業規則に費用の扱いを定めておきます。

診断書の金額の相場は、どこで確認できますか?

今回確認した国の資料には、休職や復職の診断書の金額の記載は見つかりませんでした。金額を知りたいときは、診断書を書いてもらう医療機関に問い合わせるよう、本人に案内してください。

傷病手当金の申請書の、医師が書く欄の費用は、会社が負担しますか?

協会けんぽの案内には、医師に記入してもらう費用の記載は見つかりませんでした。会社が負担するのか、本人が負担するのかも、確認した資料からは分かりません。従業員が加入している協会けんぽの支部または健康保険組合と、医療機関に確認するよう、本人に案内してください。会社としての扱いを決める場合は、就業規則などで決めておきます。

従業員が10人未満で、就業規則がない場合はどう考えますか?

労働基準法第89条が就業規則の作成と届出を義務づけているのは、常時10人以上の労働者を使用する使用者です。10人未満の会社では、作成の義務はありません。ただし、診断書の費用を誰が負担するかは、書面に残しておくと、あとで食い違うことを防げます。診断書の提出を求める場面、費用の負担者、精算の方法を文書にして、従業員に渡しておく方法があります。内容は、社労士に確認してください。

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まとめ

診断書の費用について、確認できたことは次のとおりです。

  • 診断書の費用の負担者を定めた条文は、今回確認した4つの法令では見つかりませんでした。モデル就業規則、手引き、厚生労働省のQ&Aにも、休職や復職の診断書の費用の負担者は書かれていません
  • 確認した範囲では、「会社が負担する」「本人が負担する」のどちらかに決まっているとは言えません。会社が就業規則などで決めておく項目と考えられます
  • 会社が主治医に情報提供を依頼するときは、手引きが、費用負担を事前に主治医と取り決めておくことを求めています
  • 法定の健診、ストレスチェック、面接指導は事業者負担とされています。傷病手当金、労災保険の書類は、制度ごとに扱いが異なります。休職の診断書に当てはめず、加入先や社労士に確認します
  • 給与から差し引く運用にするときは、労働基準法第24条との関係を社労士に確認します

まずは、自社の就業規則を開き、診断書の提出と費用の定めがあるかを確認するところから始めてください。

参考文献

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この記事を書いた人

整形外科医/産業医

整形外科専門医として急性期病院・クリニックにて保険診療に従事。
現場での診療を通じ、患者・医療者それぞれが抱える課題を認識し、医療とテクノロジーを横断した問題解決に取り組む。
総フォロワー数20万人を超える医師コミュニティ「Elite Doctors」を主宰。
全国、全診療科、あらゆる年代の医師ネットワークと知見を活かした事業共創・医療DX支援・組織開発を行っている。

著書に「クリニック経営者のためのゼロから始めるSEO集患術」等

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