この記事では、健康診断後に労働基準監督署へ提出する「定期健康診断結果報告書」の書き方や提出手順を、記入例に沿って解説します。「健診は終わったけれど、報告書の作成手順がよくわからない」とお困りの人事担当者様へ、提出義務の対象から電子申請の方法、産業医がいない場合の対処法まで、実務でつまずきやすいポイントを網羅的に整理しました。
医師コミュニティを基盤に産業保健を支援する専門家の視点で、担当者様の疑問を解決します。報告書の要となる産業医の選任や日々の運用にお困りでしたら、全国対応の弊社サービスがお力になりますので、ぜひ一度ご相談ください。
- 定期健康診断結果報告書の提出義務がある事業場の条件
- 報告書の書き方(5つのパートの記入ポイント)
- 産業医が未選任の場合の対応方法
- 提出方法(令和7年1月1日から原則電子申請)
- 提出前に確認したい記入ミスのポイント

健康診断結果報告書、あなたの会社は提出義務あり?対象と期限を確認

定期健康診断を実施した後、労働基準監督署への結果報告書を提出する必要があるか、対象となる事業場の条件や提出期限について解説します。法令で定められた義務であり、自社が対象かどうかを正しく把握することが重要です。
従業員50人以上で提出義務発生!「常時使用する労働者」の数え方
常時使用する労働者が50人以上の事業場には、健康診断結果報告書の提出義務があります。この「常時使用する労働者」には、正社員だけでなく、一定の条件を満たすパートタイマーやアルバイトも含まれるため注意が必要です。
具体的には、以下の条件を満たす労働者がカウントの対象とされています。
- 期間の定めのない労働契約により使用される者
- 期間の定めがある場合でも、契約更新により1年以上使用されることが予定されている者
- 契約更新により1年以上引き続き使用されている者
- 週の労働時間数が、同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上である者
事業場の規模を判断する際は、雇用形態にかかわらず、これらの条件に当てはまる労働者の総数を確認することが求められます。
提出先と期限はいつまで?所轄の労働基準監督署へ遅滞なく提出
健康診断結果報告書の提出先は、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署です。提出期限については、法令で「遅滞なく」と定められており、具体的な日付が明記されているわけではありません。
「遅滞なく」の具体的な日数は法令上定められていません。健診結果がそろい次第、速やかに報告書を作成し提出する準備を進めることが望ましいといえます。自社の管轄の労働基準監督署がどこかわからない場合や、提出期限の目安について不安がある場合は、所轄の労働基準監督署に直接確認することをおすすめします。
もし提出を忘れたら?労働安全衛生法に基づく罰則のリスク
健康診断結果報告書の提出を怠った場合、労働安全衛生法違反となり罰則が科される可能性があります。労働安全衛生法第100条に基づく報告義務を果たさないと、同法第120条により50万円以下の罰金に処せられると定められています。(e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第100条・第120条)
罰則が適用されるだけでなく、法令遵守の意識が低い企業とみなされ、社会的信用の低下につながるリスクも考えられます。人事・総務担当者は、提出漏れがないよう、対象事業場と期限を正確に管理することが重要です。
衛生管理者や産業医の選任を含めた安全衛生管理体制全体の整備状況が気になる方は、以下の記事もあわせてご参照ください。
>>安全衛生管理体制の組織図|50名以上で必須、テンプレートでわかる作り方
【記入例つき】定期健康診断結果報告書の書き方を5つのパートで解説

「定期健康診断結果報告書(様式第6号)」の書き方を、5つのパートに分けて具体的に解説します。各項目で記入すべき内容と注意点を整理しましたので、お手元の様式と照らし合わせながらご確認ください。
パート1:事業場の基本情報(名称、所在地、労働保険番号など)
報告書の冒頭部分では、事業場の名称や所在地、労働保険番号といった基本情報を正確に記入します。これらの情報は、どの事業場からの報告であるかを特定するために不可欠です。
記入する主な項目は下記のとおりです。
- 労働保険番号: 事業場に割り当てられた14桁の番号を記入します。
- 事業の名称: 正式名称を省略せずに記入します。
- 事業場の所在地: 登記上の住所ではなく、実際に事業を行っている場所の住所を記入します。
- 事業の種類: 「日本標準産業分類」の中分類を参考に、該当する業種を記入します。(総務省「日本標準産業分類」)
パート2:健診実施状況(在籍労働者数、受診者数など)
このパートでは、報告日時点での在籍労働者数と、実際に健康診断を受診した人数を記入します。事業場の健康管理状況を把握するための基本的な数値となる部分です。
- 在籍労働者数: 「常時使用する労働者」の総数を記入します。
- 受診労働者数: 一般健康診断を受診した労働者の人数を記入します。
在籍労働者数と受診労働者数が一致しない場合は、その理由(休職、長期出張など)を備考欄に記載することが望ましいとされています。
パート3:有所見者の人数と医師の指示人数
パート3では、健康診断の結果、「異常の所見あり(有所見)」と診断された労働者の人数を記入します。さらに、その有所見者のうち、医師から就業上の措置などについて指示を受けた人数を項目ごとに分けて記載します。
下表に、医師の指示に関する項目の概要をまとめました。
| 項目 | 記入する内容 |
|---|---|
| 健診実施年月日 | 定期健康診断を実施した期間を記入します。 |
| 検査・診察項目ごとの有所見者数 | 血糖検査や血圧測定など、各項目で異常が見つかった人数を記入します。 |
| 医師の指示人数 | 健診結果に基づき、医師が「要精密検査」「要治療」などの指示をした人数を記入します。 |
パート4:健診機関と産業医の情報
健康診断を委託した医療機関と、自社の産業医に関する情報を記入するパートです。外部の専門家とどのように連携しているかを示す項目といえます。
記入する情報は以下のとおりです。
- 健康診断機関の名称・所在地: 健診を実施したクリニックや病院の正式名称と住所を記入します。
- 産業医の氏名・所属医療機関: 事業場を選任している産業医の氏名と、その産業医が所属する医療機関名などを記入します。
パート5:事業者と産業医の記名・押印欄の要点
報告書の末尾には、事業者と産業医がそれぞれ記名・押印または署名をする欄があります。この署名により、報告書の内容に責任を持つこと、また産業医が内容を確認したことを証明します。
法改正により、2020年からは多くの行政手続きで押印が原則不要となりました。しかし、産業医の署名は、健診結果の内容を確認し、事業者へ必要な意見を述べたことの証跡として重要です。産業医に内容を確認してもらった上で、記名・押印または署名を依頼しましょう。
【産業医がいない場合】報告書の「産業医欄」はどう書く?3つの対処法

従業員50人以上の事業場では産業医の選任が義務付けられていますが、「これから選任するところ」「急な退職で後任が見つからない」といった事情で、報告書作成時点で産業医がいないケースもあるかもしれません。
その場合の対処法を3つご紹介します。
対処法1:産業医選任前であることを「備考欄」に記載して提出する
産業医欄を空欄にした上で、備考欄に「産業医選任手続き中」や「後任の産業医を探している」といった状況を具体的に記載して提出する方法が考えられます。これはあくまで一時的な措置であり、労働基準監督署から産業医を速やかに選任するよう指導を受ける可能性があります。
根本的な解決にはならないため、この方法を取る場合でも、並行して産業医の選任活動を急ぐ必要があります。
対処法2:地域の「産業保健総合支援センター(産保センター)」に相談する
全国に設置されている「産業保健総合支援センター(産保センター)」に相談するのも一つの手です。産保センターは、企業の産業保健活動を支援する公的な機関で、産業医の選任に関する相談にも無料で対応しています。
地域の医師会と連携して情報提供を行っている場合もあり、自社の状況を相談する窓口として活用できます。ただし、直接的に産業医を紹介する機能ではない点には注意が必要です。
対処法3:産業医選任サービスを活用し、根本的な課題解決を目指す
自社だけで産業医を探すのが難しい場合、産業医の選任を専門にサポートするサービスを利用することが根本的な解決策になります。こうしたサービスは、企業の要望に合う産業医を探し、選任手続きからその後の運用までを支援します。
「何から手をつけていいかわからない」「報告書の作成だけでなく、今後の健康管理体制も整えたい」とお考えの人事・総務担当者様は、ぜひ一度ご相談ください。弊社は全国対応の産業医サービスとして、法令遵守はもちろん、企業の健康経営推進までを視野に入れたサポートを提供しています。

提出方法は原則「電子申請」|令和7年1月1日から義務化されています

定期健康診断結果報告書は、令和7年(2025年)1月1日から、e-Govを使った電子申請での提出が原則義務化されています(厚生労働省 東京労働局「労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます」)。同ページには、定期健康診断結果報告書を含む複数の手続きが電子申請の対象として明記されています。
「電子申請か書面提出か選べる」という段階はすでに終わっているため、これから初めて提出する担当者は電子申請を前提に準備しましょう。
e-Govを利用する電子申請の手順と注意点
電子申請は、政府が運営する行政手続きのオンライン窓口「e-Gov」を利用して、24時間いつでも報告書を提出できる方法です。
手順の概要は、e-Govでアカウントを作成し、画面の案内に沿って申請書データを作成、電子署名を付与して送信するという流れです。初めて利用する場合は、以下の準備が必要になります。
- e-Govアカウントの作成
- PC操作・システム入力に慣れておくこと
- 電子申請に必要な添付書類のデータ化
書面での提出はもう認められない?困ったときの相談先
電子申請が原則義務化された後、電子申請が困難な事業場向けの取り扱いがあるかどうかは、事業場ごとの事情によって個別の判断となります。自社の環境で電子申請の準備が間に合わない、システム操作に不安があるといった場合は、独自に判断せず、まず所轄の労働基準監督署に相談してください。
提出前の最終確認!担当者が陥りがちな3つの記入ミスとチェックリスト

報告書を提出する前に、担当者が見落としがちな記入ミスがないか最終確認しましょう。よくあるミスを3つ取り上げ、確認すべきポイントを整理しました。
ミス1:在籍労働者数と受診者数のカウント間違い
在籍労働者数と受診者数のカウント間違いは、非常によくあるミスの一つです。特に、「常時使用する労働者」の範囲の解釈を誤り、パート・アルバイトの従業員をカウントから漏らしてしまうケースが見受けられます。
報告書を提出する前に、以下の点を確認しましょう。
- パート・アルバイトのうち、週の労働時間数が正社員の4分の3以上の従業員は含まれているか
- 契約期間が1年未満であっても、契約更新が予定されている従業員は含まれているか
- 派遣社員は、派遣元の事業場でカウントするため、自社の在籍労働者数には含めない
ミス2:産業医の記名・押印に関する誤解
産業医の記名・押印または署名は、報告内容を医師が確認した証となる重要な項目です。法改正で押印が必須でなくなったことを、「産業医の確認自体が不要になった」と誤解してしまうケースがあります。
産業医が選任されている事業場では、必ず産業医に報告書の内容を確認してもらい、署名をもらう必要があります。産業医が未選任の場合は、前述した対処法を参考に、早急に選任手続きを進めることが求められます。
ミス3:様式の年度や種類の間違い(ストレスチェック報告書との混同)
古い年度の様式を使用してしまったり、よく似た名称の「ストレスチェック結果報告書」と間違えたりするミスも発生します。様式は法改正などによって変更される可能性があるため、必ず最新のものを使いましょう。
提出前のチェック項目は下記のとおりです。
- 提出する様式は「定期健康診断結果報告書(様式第6号)」で間違いないか
- 厚生労働省のウェブサイトなどから、最新版の様式をダウンロードして使用しているか
- ストレスチェックの結果は、別の報告書で提出する必要があることを理解しているか
報告書は提出して終わりじゃない!未来の健康経営につなげる2つの視点

健康診断結果報告書の提出は、法律で定められた義務ですが、単なる事務作業で終わらせるのはもったいないといえます。集約したデータを活用し、未来の健康経営につなげる2つの視点をご紹介します。
視点1:提出した報告書の控えは法定の保存期間まで適切に管理する
提出した健康診断結果報告書の控えは、労働安全衛生規則に基づき、5年間保存する義務があります。これは、個々の従業員の健康診断個人票と同じ保存期間です。
控えを適切に保存しておくことで、労働基準監督署の調査に対応できるだけでなく、過去のデータと比較して事業場の健康課題の推移を把握できます。ファイリングやデータ化など、後から参照しやすい形で管理する体制を整えましょう。
視点2:健診結果データを分析し、職場環境改善のヒントを見つける
報告書作成の過程で集計した「有所見者数」などのデータは、自社の健康課題を可視化する貴重な情報源です。このデータを分析することで、職場環境の改善や健康増進施策の立案に役立てられます。
例えば、特定の検査項目で有所見者が多い傾向にあれば、その原因を探り、食生活改善セミナーや運動促進キャンペーンといった対策を検討できます。産業医と連携し、専門的な視点からデータを分析してもらうことで、より効果的な職場改善のヒントが見つかる可能性が高まります。有所見者への面談や就業上の措置など、報告書提出後の具体的な対応方法については、健康診断の事後措置とは?担当者がすべき手順と法的義務を解説で詳しく解説しています。こうしたデータ活用の積み重ねは、健康経営優良法人の認定申請を目指す際の土台にもなります。
- 提出した報告書の控えを保存期間まで適切に保管する
- 有所見者数などのデータを分析し、職場環境改善に役立てる
「報告書提出後のデータ活用まで、なかなか手が回らない」という人事・総務担当者様も多いかもしれません。産業医の選任から、健診結果の分析、職場環境改善の提案までを一括でサポートするサービスを活用すれば、担当者の負担を軽減しつつ、戦略的な健康経営を推進できます。

まとめ
従業員が常時50名以上の事業場では、健康診断後に労働基準監督署へ結果報告書を提出する義務があります。本記事で解説した記入例や注意点を参考に、産業医の確認を得た上で正しく作成・提出しましょう。報告書の提出で終わらせず、健診データを職場環境の改善に活かすことが、未来の健康経営につながります。
報告書の作成やその後のデータ活用など、専門的な業務に手が回らずお困りの場合は、人事担当者様の負担を軽減し戦略的な健康経営を支援する弊社サービスがお力になりますので、ぜひご相談ください。

