この記事を読めば、従業員50名以上で必須となる安全衛生管理体制の組織図がテンプレート付きでわかります。「従業員数が50名を超えたが、どんな体制を組めばいいのか、組織図の作り方がわからない」といった人事・労務担当者の方のお悩みに応え、本記事では規模・業種別のパターンから主要メンバーの役割、具体的な構築ステップまで網羅的に解説します。
法令遵守の第一歩として、自社に合った体制をスムーズに構築するためにお役立てください。

- 従業員50名以上で必須!安全衛生管理体制の組織図【テンプレート付】
- 組織図の主要メンバー4名の役割と選任要件を徹底解説
- ゼロから始める安全衛生管理体制の構築3ステップ
従業員50名以上で必須!安全衛生管理体制の組織図【テンプレート付】

従業員が常時50名以上の事業場では、労働者の安全と健康を守るための「安全衛生管理体制」を組織的に構築することが法律で定められています。この体制を明確にするために作成するのが、安全衛生管理体制の組織図です。
【図解】50名以上の事業場で求められる安全衛生管理体制の全体像
50名以上の事業場で求められる安全衛生管理体制は、事業者を中心に各専門家が連携する形が基本となります。この体制は、労働災害の防止や従業員の健康管理を組織的に進めるための重要な仕組みといえます。
体制の全体像は、事業者を頂点とし、その下に事業全体を統括する「総括安全衛生管理者」が置かれるのが一般的です。そして、衛生管理を担当する「衛生管理者」、医学的見地から助言する「産業医」、特定の業種では危険防止を担う「安全管理者」が選任されます。
さらに、これらのメンバーに加えて労働者側の代表も参加する「安全衛生委員会」を設置し、労使一体で職場の安全衛生に関する課題を話し合います。この関係性を組織図として可視化することで、誰がどのような役割を担い、どのような指揮命令系統で動くのかが明確になるのです。
【規模・業種別】自社に必要な組織図のパターンを確認しよう
自社に必要な安全衛生管理体制の組織図は、事業場の従業員数や業種によって構成メンバーが異なります。法令で定められた要件を確認し、自社がどのパターンに該当するかを把握することが重要です。
事業場の規模と業種に応じて、選任が義務付けられている主な役職を下記に整理します。
| 従業員数 | 業種 | 総括安全衛生管理者 | 安全管理者 | 衛生管理者 | 産業医 | 安全衛生委員会 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 50人以上 | 全業種 | – | – | 1人以上 | 1人以上 | 設置 |
| 特定業種※ | – | 1人以上 | 1人以上 | 1人以上 | 設置 | |
| 100人以上 | 特定業種※1 | 1人 | 1人以上 | 1人以上 | 1人以上 | 設置 |
| 300人以上 | 特定業種※2 | 1人 | 1人以上 | 1人以上 | 1人以上 | 設置 |
| 501人以上 | 全業種 | – | – | 6人以上 | 専属1人 | 設置 |
| 1,000人以上 | 全業種 | 1人※3 | – | 6人以上 | 専属1人 | 設置 |
| 特定の有害業務に従事する事業場 | – | – | – | 専属1人 | 設置 | |
| 3,001人以上 | 全業種 | – | – | 6人以上 | 専属2人 | 設置 |
※林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(一部)、電気・ガス・水道業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業など ※1 パルプ・紙製造業、鉄鋼業、造船業など ※2 建設業、製造業など ※3 1,000人を超える事業場を複数有する企業等で、全社的な安全衛生管理を行う必要がある場合に本社等に選任が求められることがあります。
自社の状況と上表を照らし合わせ、必要な人員を正確に把握しましょう。
すぐに使える!組織図テンプレートと作成時の注意点
組織図のテンプレートを活用することで、自社に必要な体制を効率的に可視化できます。テンプレートはあくまで雛形であり、自社の実情に合わせて必要な役職や人員を追加・修正して使用することが大切です。
一般的な組織図に記載する項目は、以下のとおりです。
【安全衛生管理体制 組織図テンプレート例】
- 事業者
- 総括安全衛生管理者
- 氏名:〇〇 〇〇
- 安全衛生推進者/衛生推進者(10人以上50人未満の事業場)
- 氏名:〇〇 〇〇
- 安全管理者
- 氏名:〇〇 〇〇
- 衛生管理者
- 氏名:〇〇 〇〇
- 産業医
- 氏名:〇〇 〇〇
- 安全衛生委員会
- 議長:〇〇 〇〇委員:氏名一覧
組織図を作成する際は、いくつかの注意点があります。
- 役職だけでなく氏名も明記する: 誰がその役割を担っているのかを全従業員がわかるようにします。
- 指揮命令系統を明確にする: 誰が誰を指揮し、報告・連絡・相談はどのルートで行うのかを線で結ぶなどして示します。
- 作成後は必ず従業員へ周知する: 組織図は作成して終わりではありません。掲示板や社内イントラネットなどを活用し、全従業員に周知徹底することが求められます。
組織図の主要メンバー4名の役割と選任要件を徹底解説
安全衛生管理体制の組織図には、専門的な役割を担う主要なメンバーが含まれます。ここでは、特に重要な4つの役職について、その役割と選任するための要件を詳しく解説します。
総括安全衛生管理者|体制全体を統括する責任者
総括安全衛生管理者は、事業場における安全衛生管理業務を統括し、体制全体の責任を負う重要な役職です。労働災害の防止や従業員の健康確保に関する方針を決定し、実行を指揮する役割を担います。
具体的な職務内容は下記のとおりです。
- 安全衛生に関する方針の表明
- 労働災害や健康障害を防止するための計画作成、実施、評価、改善
- 安全管理者、衛生管理者などの指揮
- 労働災害の原因調査および再発防止対策の策定
選任要件としては、その事業の実施を実質的に統括管理する権限と責任を持つ人物(例:工場長、支店長など)である必要があります。建設業や製造業など、特定の業種で常時100人以上の労働者を使用する事業場などで選任が義務付けられています。
衛生管理者|労働者の健康障害を防止する専門家
衛生管理者は、労働者の健康障害を防止するため、職場の衛生全般にかかわる技術的な事項を管理する専門家です。専門的な知識を活かして、従業員が健康に働ける環境づくりを主導します。
主な職務は以下のとおりです。
- 少なくとも週に1回の作業場所などの巡視
- 健康に異常がある者の発見と処置
- 労働衛生に関する教育の実施
- 健康診断の実施に関する実務
衛生管理者になるには、国家資格である衛生管理者免許が必要です。免許には第一種と第二種があり、業種によって必要な免許が異なります。常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で選任が義務付けられており、事業場の規模に応じて必要な人数も変動します。
産業医|医学的見地から健康管理を指導・助言
産業医は、労働者の健康管理などについて、専門的な立場から指導や助言を行う医師です。従業員の心身の健康を保持増進し、快適な職場環境を形成するために不可欠な存在といえます。
具体的な役割には、次のようなものがあります。
- 健康診断の実施および結果に基づく措置
- ストレスチェックの実施と高ストレス者への面接指導
- 長時間労働者への面接指導
- 少なくとも月に1回の作業場などの巡視と専門的な立場からの指導・助言
- 安全衛生委員会への出席と意見陳述
産業医として選任されるには、医師であることに加え、労働者の健康管理を行うのに必要な医学知識について厚生労働省令で定める要件を備えている必要があります。常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で選任が義務付けられています。
安全管理者|危険を防止する技術的事項を管理(※特定業種のみ)
安全管理者は、建設業や製造業といった特定の業種において、労働災害につながる危険を防止するための技術的な事項を管理する専門家です。作業現場の安全確保に特化した役割を担います。
主な職務内容は以下のとおりです。
- 建設物、設備、作業場所または作業方法に危険がある場合における応急措置または適当な防止の措置
- 安全装置、保護具その他危険防止のための設備・器具の定期的な点検および整備
- 作業の安全についての教育および訓練の実施
安全管理者に選任されるためには、厚生労働大臣が定める研修を修了した者や、特定の学歴と実務経験を有する者である必要があります。屋外産業的業種や屋内産業的業種のうち、法令で定められた業種で常時50人以上の労働者を使用する事業場で選任が必要です。
ゼロから始める安全衛生管理体制の構築3ステップ

安全衛生管理体制の構築は、法令遵守の観点からも、従業員の安全と健康を守るためにも重要です。ここでは、ゼロから体制を立ち上げるための具体的な3つのステップを解説します。
ステップ1:自社に必要な人員の特定と選任要件の確認
安全衛生管理体制を構築する最初のステップは、自社の事業場にどのような役職の人が何人必要かを正確に把握することです。これは、事業場の業種と常時使用する労働者の数によって決まります。
まずは自社の業種が、安全管理者や特定の要件を持つ衛生管理者の選任が必要な「特定業種」に該当するかを確認します。次に、従業員数を基に、総括安全衛生管理者、衛生管理者、産業医、安全管理者のそれぞれについて、選任義務の有無と必要な人数を特定します。
この段階で、それぞれの役職に求められる資格や経験などの「選任要件」もあわせて確認しておくことが、後のステップをスムーズに進めるためのポイントです。
ステップ2:社内での選任または外部委託・採用の決定
必要な人員が特定できたら、次にその人材をどのように確保するかを決定します。確保する方法は、主に「社内からの選任」と「外部からの確保(外部委託・中途採用)」の2つです。
衛生管理者や安全管理者のように、資格や研修修了が要件となる役職については、まず社内に適任者がいるかを確認します。もし適任者がいない場合は、従業員に資格取得を支援して育成するか、資格を持つ人材を中途採用するかの検討が必要です。
一方、産業医のように高度な専門性が求められる役職は、外部の医療機関や紹介サービスを通じて委託契約を結ぶのが一般的とされています。それぞれの役職の特性や自社の状況をふまえて、最適な確保方法を選択しましょう。
ステップ3:労働基準監督署への選任報告書の提出
体制に必要な人員を選任した後は、その旨を所轄の労働基準監督署長へ報告する義務があります。この手続きは、法令で定められた重要な最終ステップです。
総括安全衛生管理者、衛生管理者、産業医、安全管理者を選任すべき事由が発生した日(例:従業員数が50人に達した日)から14日以内に、それぞれの「選任報告書」を提出する必要があります。報告書の様式は、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできます。
提出を怠ると法令違反となる可能性があるため、選任が完了したら速やかに手続きを進めることが求められます。報告書には、選任者の資格を証明する書類の写しなどを添付する必要があるため、事前に準備しておくとスムーズです。
「社内に適任者がいない…」中小企業が直面する2大課題と解決策

安全衛生管理体制を構築する上で、多くの中小企業が「社内に適任者がいない」という課題に直面します。特に、専門資格が必要な「衛生管理者」と「産業医」の確保は大きなハードルです。ここでは、その解決策を解説します。
課題1:衛生管理者の資格保有者がいない場合の3つの対処法
衛生管理者の資格保有者が社内にいない場合、主に3つの対処法が考えられます。それぞれのメリットとデメリットを理解し、自社に合った方法を選ぶことが重要です。
対処法は、以下のとおりです。
- 従業員に資格取得を支援する
- メリット: 自社の業務内容を理解している従業員が担当するため、現場の実情に合った活動が期待できます。また、従業員のスキルアップやキャリア形成にもつながると考えられています。
- デメリット: 資格取得までに時間とコストがかかります。合格するまで衛生管理者が不在の状態が続く可能性があります。
- 資格保有者を中途採用する
- メリット: 即戦力としてすぐに衛生管理者を選任できます。他社での経験を活かした活動が期待できる点も魅力です。
- デメリット: 採用コストがかかるほか、自社の文化や業務に慣れるまで時間がかかる場合があります。
- 外部機関に委託する(労働衛生コンサルタントなど)
- メリット: 専門家による質の高い衛生管理活動が期待できます。自社で人材を確保する必要がないため、採用や育成の負担がありません。
- デメリット: 外部への委託費用が継続的に発生します。社内にノウハウが蓄積しにくいという側面もあります。
課題2:産業医の探し方と失敗しない選び方のポイント
産業医の選任は法律で義務付けられていますが、自社に合った医師をどう探せばよいかわからないという声も少なくありません。産業医選びに失敗しないためには、探し方と選び方のポイントをおさえることが大切です。
主な産業医の探し方には、次のような方法があります。
- 地域の医師会に相談する
- 健康診断を委託している健診機関に紹介を依頼する
- 産業医紹介サービスを利用する
特に、初めて産業医を探す場合や、メンタルヘルス対策など特定の課題に対応できる医師を探したい場合は、専門の紹介サービスを活用するのが効率的です。
失敗しない産業医選びのポイントは、下表にまとめました。
| ポイント | 確認事項 |
|---|---|
| 専門性・経験 | ・メンタルヘルス対応の経験は豊富か ・自社の業種や働き方への理解があるか ・ハラスメントや労務問題に関する知見はあるか |
| コミュニケーション | ・人事担当者や従業員と円滑に連携できるか ・専門的な内容をわかりやすく説明してくれるか |
| サービス内容 | ・訪問頻度や面談可能な時間は自社のニーズに合っているか ・オンラインでの面談や相談に対応しているか |
| 費用 | ・契約形態(嘱託・専属)と報酬は妥当か ・訪問費用以外に追加料金は発生しないか |
法令遵守はもちろん、自社の課題解決に貢献してくれる産業医を見つけることが、実効性のある安全衛生管理体制の鍵となります。「どの産業医が自社に合うかわからない」「法令遵守を確実に進めたい」といったお悩みをお持ちでしたら、一度専門の紹介サービスに相談してみてはいかがでしょうか。自社の状況をヒアリングした上で、最適な産業医探しをサポートしてくれます。

体制構築と運用にかかる費用の目安は?
安全衛生管理体制を構築し、運用していくためには一定の費用がかかります。特に専門家である衛生管理者と産業医の選任にはコストが発生するため、あらかじめ目安を把握しておくことが大切です。
衛生管理者を選任する場合の費用(資格取得支援・外部委託)
衛生管理者の選任にかかる費用は、社内で育成するか、外部に委託するかによって大きく異なります。それぞれのケースでの費用の目安を把握し、予算計画を立てましょう。
従業員に資格取得を支援する場合 従業員が資格を取得するまでにかかる費用は、主に受験料や教材費、講習会の参加費です。
- 受験手数料:数千円程度
- テキスト・問題集代:数千円から1万円程度
- 受験対策講習会:数万円程度
会社としてこれらの費用を補助することで、従業員の資格取得を後押しできます。
外部に委託する場合 労働衛生コンサルタントなどの外部専門機関に衛生管理者の業務を委託する場合、月額の委託料が発生します。費用は事業場の規模や委託する業務範囲によって変動しますが、一般的には月額数万円からが目安とされています。
産業医を選任する場合の費用相場(嘱託・専属)
産業医の費用は、勤務形態(嘱託・専属)と訪問頻度によって決まるのが一般的です。自社の事業場規模やニーズに合った契約形態を選ぶ必要があります。
嘱託産業医の場合 嘱託産業医は、月に数回、あるいは数時間にわたって事業場を訪問する非常勤の産業医です。多くの企業がこの形態で契約しています。費用相場は、事業場の従業員数や月1回の訪問時間によって変動しますが、一般的には5万円から15万円程度が目安と考えられています。
専属産業医の場合 専属産業医は、事業場に常勤する産業医で、労働者数が1,000人以上(特定の有害業務の場合は500人以上)の事業場で選任が義務付けられています。費用は年俸制となり、経験やスキルによって異なりますが、一般的な勤務医と同等かそれ以上の水準が目安です。
形骸化させない!安全衛生委員会の立ち上げと活性化のコツ

安全衛生委員会は、職場の安全と健康を守るための中心的な役割を担いますが、立ち上げたものの形骸化してしまうケースも少なくありません。ここでは、委員会の設置から活性化させるためのコツまでを解説します。
安全衛生委員会の設置義務と構成メンバーの選出方法
安全衛生委員会は、常時50人以上の労働者を使用する事業場で設置が義務付けられています。この委員会は、労使が協力して職場の安全衛生に関する課題について調査審議し、事業者へ意見を述べるための場です。
委員会の構成メンバーは、法令で定められています。主なメンバーは次のとおりです。
- 議長:総括安全衛生管理者、または事業の実施を統括管理する者などから1名(議長以外の委員を除く)
- 事業者側の委員:
- 衛生管理者
- 産業医
- 安全管理者
- その他、事業者から指名された者
- 労働者側の委員:
- 事業場の労働者で、安全または衛生に関し経験を有する者
- 労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数代表者)の推薦に基づき指名された者
ポイントは、労働者側の委員を全体の半数以上とすることです。労使双方の視点から議論することで、実効性のある対策が生まれやすくなります。
開催頻度と議題の決め方【すぐに使える議題テンプレート例】
安全衛生委員会を形骸化させないためには、定期的な開催と意義のある議題設定が重要です。委員会は、法令により毎月1回以上の開催が義務付けられています。
議題は、年間スケジュールを立てて計画的に決めるのがおすすめです。法令で定められた調査審議事項を軸に、季節的なテーマ(夏場の熱中症対策、冬場の感染症対策など)や、自社の課題を盛り込むとよいでしょう。
すぐに使える議題のテンプレート例を下記に示します。
| 項目 | 議題の例 |
|---|---|
| 報告事項 | ・産業医・衛生管理者による職場巡視報告 ・前月の時間外労働の状況 ・ヒヤリハット事例の共有 ・健康診断の受診状況と結果概要 |
| 審議事項 | ・【今月の重点テーマ】メンタルヘルス不調の予防策について ・長時間労働者への対策の検討 ・来月に実施する安全衛生教育の内容について ・ヒヤリハット事例に対する再発防止策の審議 |
| その他 | ・従業員からの意見共有 ・次回委員会のテーマ確認 |
このように定型的な報告と、毎月テーマを変える審議事項を組み合わせることで、マンネリ化を防ぎ、活発な議論を促せます。
議事録の作成・周知・保管に関する法的要件とポイント
安全衛生委員会の開催後は、その議事の概要を記録した議事録を作成し、従業員へ周知するとともに、3年間保管することが法令で義務付けられています。これは、委員会の活動を透明化し、決定事項を確実に実行するためです。
議事録を作成する際のポイントは、次のとおりです。
- 開催日時、場所、出席者名を明記する
- 審議された事項、出された意見、決定した事項を具体的に記録する
- 誰が、いつまでに、何を行うのか(ToDo)を明確にする
作成した議事録は、社内の掲示板に掲示する、イントラネットに掲載する、書面で回覧するなど、従業員がいつでも確認できる方法で周知することが求められます。議事録を通じて委員会の活動を共有することが、全従業員の安全衛生への意識向上につながります。
法令遵守で終わらせない!体制を企業の成長につなげる運用のヒント

安全衛生管理体制の構築は、法令遵守が第一の目的ですが、それを企業の成長につなげる「攻めの活用」も可能です。ここでは、体制が形骸化するのを防ぎ、企業の競争力強化に活かすためのヒントを紹介します。
体制構築がゴールに?中小企業が陥りがちな失敗パターン
安全衛生管理体制をせっかく構築しても、それがゴールになってしまい、実質的な活動が伴わないケースは少なくありません。特に中小企業では、リソースの制約から以下のような失敗パターンに陥りがちです。
- 委員会が報告会で終わる: 産業医や衛生管理者からの報告を聞くだけで、具体的な改善策の議論にまで至らない。
- 専門家の活動が最低限: 産業医の職場巡視や衛生管理者の活動が、法令で定められた最低限の回数にとどまり、 proactiveな提案がない。
- 経営層の関心が低い: 安全衛生管理をコストと捉え、経営課題としての認識が薄い。
- 従業員が他人事: 「専門家や担当者がやること」という意識が強く、全社的な取り組みになっていない。
これらの状況では、法令は遵守できていても、職場の本質的な安全衛生レベルの向上や、生産性の向上にはつながりにくいといえます。
守りから攻めへ転換する「戦略的産業保健」という考え方
体制の形骸化を防ぎ、企業の成長につなげるためのキーワードが「戦略的産業保健」です。これは、従来の「守り」の産業保健(労働災害や健康障害の防止)から一歩進んで、「攻め」の産業保健を目指す考え方とされています。
「攻め」の産業保健とは、従業員の健康を重要な経営資源と捉え、健康増進への投資を通じて組織全体の活性化や生産性向上を実現することです。
- 守りの産業保健(従来): 法令遵守、リスク管理、休職者対応など
- 攻めの産業保健(戦略的): 健康経営の推進、健康データ分析に基づく施策立案、従業員のエンゲージメント向上、プレゼンティーズム(出勤しているが不調で生産性が低い状態)の改善など
安全衛生管理体制は、この戦略的産業保健を推進するための土台となる組織です。安全衛生委員会を、リスク管理だけでなく、健康増進施策を議論する場として活用することが第一歩となります。
安全衛生管理体制を健康経営の土台にするための第一歩
安全衛生管理体制を、単なる法令遵守の仕組みから「健康経営」の土台へと進化させるためには、まず経営トップの意識改革が重要です。経営者が「従業員の健康は会社の成長に不可欠である」というメッセージを明確に発信することが、すべての始まりといえます。
その上で、第一歩として取り組める具体的なアクションは以下のとおりです。
- 安全衛生方針に健康経営の視点を加える: 会社として従業員の健康づくりを支援する姿勢を明文化する。
- 委員会の議題に健康増進テーマを取り入れる: 禁煙支援、運動習慣の促進、食生活改善など、ポジティブな健康課題を議論する。
- 産業医や衛生管理者にプラスアルファの役割を期待する: 健康セミナーの講師を依頼したり、健康に関する情報発信を協力してもらったりする。
体制構築や運用、さらには戦略的な活用まで考えると、人事担当者の業務は多岐にわたります。「日々の業務に追われて、専門的な運用まで手が回らない」と感じることもあるかもしれません。そのような場合は、産業保健活動をトータルでサポートしてくれる外部サービスに相談するのも一つの手です。
産業医の選任から委員会の運営支援、健康経営の推進まで、専門家の知見を借りることで、効率的かつ効果的に体制を運用できるようになります。

体制構築に活用できる助成金・支援制度はある?
安全衛生管理体制の構築や運用には費用がかかりますが、国が提供する助成金や支援制度を活用することで、企業の負担を軽減できる可能性があります。ここでは、代表的な2つの制度を紹介します。
小規模事業場産業保健活動支援促進助成金
この助成金は、労働者数50人未満の小規模事業場が、産業医や保健師などと契約し、産業保健活動を実施した場合に、その費用の一部を助成する制度です。体制構築の初期段階で活用しやすい支援といえます。
- 対象: 常時使用する労働者が50人未満の事業場
- 助成内容:
- 産業医・保健師との契約および活動にかかる費用ストレスチェック後の医師による面接指導にかかる費用 など
- ポイント: 従業員が50人になる前から専門家と連携し、健康管理の土台を築くきっかけになります。申請には要件があるため、詳細は独立行政法人労働者健康安全機構のウェブサイトなどで確認が必要です。
職場環境改善計画助成金(団体経由産業保健活動推進助成金)
この助成金は、個別の企業が直接申請するものではなく、商工会議所などの事業主団体が活用する制度です。団体が専門家の指導のもと、傘下の中小企業に対して職場環境の改善を支援する際に費用の一部が助成されます。
- 対象: 事業主団体(商工会、協同組合など)
- 助成内容: 団体が専門家と契約し、傘下の事業者が職場環境改善計画を作成・実施した場合の費用など
- ポイント: 自社が所属する業界団体や地域の商工会議所などがこの制度を活用していないか、問い合わせてみる価値はあります。団体を通じて、専門的な支援を低コストで受けられる可能性があります。
まとめ
安全衛生管理体制の組織図は、自社の事業場規模と業種に応じて必要な人員を明確にし、法令に沿って作成することが不可欠です。体制構築は、メンバーの選任から届出、委員会の運営まで多岐にわたりますが、構築はゴールではなく、従業員の健康を守り企業の成長につなげるスタートラインです。
産業医の選任から委員会の運営まで、専門的な運用に不安を感じる場合は、産業保健活動をまとめてサポートするサービスに相談するのも有効な選択肢です。

